筆者は台湾での個展開幕と公開ライブペインティングの際に、小松に密着する機会を得た。今回の個展のテーマは「神祈(PRAYER)」。台湾で会場に集まった若者のファンから本格的なコレクターまで多くの人たちが熱狂する様子をレポートした。この時、小松は集まった人たちに向けてこう挨拶していた。
「2年前に台湾で初めて個展をしてから、祈りの意味を考えるようになりました。祈りを捧げる “PRAYER” ではなく、皆さんの祈りに応えていこうと思い、今回は描きました」
約1時間のライブペインティングの後には、個展会場でサイン会もあったが、さらに2時間以上、小松は100人のファンに丁寧に応じ、一切疲れを見せることなく、柔らかな笑顔で対応していた。
台北での個展会場で、小松美羽の画集を片手にサイン会に並ぶ人たち。若者のファンも多く見られた。
ライブペインティングの際に、マントラを唱えて集中して大胆に大型の作品を仕上げていく鬼才の姿とは、大きな「ギャップ」を感じた。彼女は一体どんな人なのだろう。また、彼女はなぜ「祈り」や「神獣」をテーマに作品作りをするようになったのか。インタビューでは、その世界観に迫りたい。
一人ひとりに丁寧にサインをする小松美羽。
密着取材最終日の3日目昼ごろ、滞在先のホテルのミーティングスペースで小松と待ち合わせをした。自身がオフィシャルアンバサダーを務めるDiorのグレーがかった花柄のストールを肩にかけ、炭酸飲料を片手にリラックスした様子で現れた。
そもそも、小松作品はどのようにして生まれたのだろうか。その源泉を探るため、まず時計の針を過去に戻したい。