テクノロジー

2020.03.23 10:00

ユーザーの心を動かすCXの仕組み──「ついやってしまう」体験のつくりかたとは?


だからこそ今、ゲームの作り手はものすごく真面目に、どうやったらプレイヤーに悲しい思いをさせないか、知恵を出し合って開発しているように、私には思えます。

その結果として、射幸心を煽るような演出も、極めて自制された状態で運用されるようになってきています。開発者とユーザが相互作用しながら、特に開発者側は商業主義的なふるまいを自制しながら、ゲームというメディアを健全な遊びとして成立させるべきだと思います。

地方のお年寄りでも理解できるデザインかどうかが大切


──これまでゲームのお話を中心に伺ってきましたが、著書で書かれている内容をゲーム以外の商品開発にも応用するうえで、どのようなことが大切になると思いますか?

これまでと同じく、いかにシンプルであるかということでしょうか。「このボタンを押せば水が出る」とか、それぐらいのシンプルさを実現したいと思っています。そうしないと、人は行動しませんから。私の中では、「地方のお年寄りでも使えるかどうか」が1つの判断基準になっていますね。

──なぜ地方のお年寄りが判断基準なのでしょうか。

言葉を選ばずにいうと、都会は「ぬるま湯」だと思うのです。満員電車に乗っていてもそうですが、気遣いのできる人の集まりなんですよね。みなさん、頭がよくてやさしい。そんなステキな都会の人に囲まれていると極めて快適なんですが、快適すぎて「ぬるま湯」的に感じることがあるんです。

その点、地方のお年寄りは正直で厳しい(笑)。業界の文脈や常識とか抜きに、自分が思うことを遠慮なくはっきりと言ってくれる。そして、そういうお年寄りが指摘してくれる内容は、実は都会の人たちがやさしい気持ちで隠してくれているけれど、偽らざる本音だったりもするんです。だからこそ、地方のお年寄りの意見を聞くことは、体験を作るうえで重要なヒントになると思います。



──前提となる情報を持っていない方にヒアリングするのは、取り組めている企業が少ないかもしれないですね。

そうなんです。ただ、地方のお年寄りに会いに行くのは大変だと思うので(笑)、もう1つオススメするとしたら、自分で“反対側の世界”をのぞく機会を持つということです。
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ライター=藤原梨香 編集=庄司智昭 写真=廣田達也

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