筆者が住むスペインのバルセロナでは、13日から全ての学校が休校となった上、その日の夕方には多くのショップやレストランが店を閉めた。大学が4月3日まで休校という知らせを聞くや否や、多くの学生が帰国の準備に取り掛かった。
ほんの数日前まで、平凡な日常を送っていたイタリア以外のヨーロッパ諸国。パンデミックが宣言されて以来、大災害の後のような雰囲気に陥った。スーパーマーケットに食品がなくなるという事態も、地元の人によるとこれまで一度も起こったことがなかったようだ。
メディアの報道で左右されるEUの反応
12日にフランスとスペインを中心にヨーロッパの感染者が激増して以来、世間は一気に忙しくなった。マドリードの大学が全校閉鎖されたというニュースが出ると、学生たちの話題は「バルセロナも休校」で持ちきりだった。
一旦学校閉鎖が指示されると、そのあとの学生の動きは驚くほどに迅速であった。週末に帰国するチケットを取ったと思いきや、次はスペインの国境が封鎖されるかもしれないというニュースを見て、一斉に次の日の朝一に出発する航空券を取り直していた。
ドイツ人にイギリス人、イタリア人、みんな家族と電話をしながら安否を確かめあっている。筆者はこの光景を見て、東日本大震災後の日本を思い出した。よく考えてみると、ヨーロッパではテロや治安悪化の不安はあるが、すべての人の健康や生活を脅かすこのような深刻な事態は戦後ほぼ経験したことがないのではないかと気づいた。実際に周囲に聞いてみると、やはり「初めての出来事だ」と口々に話していた。
イタリア人の怒り。一人一人の責任感
イタリアでは感染者が2万人を超え、死者も1400人を超えた。ロンバルディア州をはじめ全土が閉鎖されて以来、人々は日々怯えながら過ごしている。そんな状況にもかかわらず、ヨーロッパ間の渡航を諦められない若者も中にはいるようだ。今では帰国以外の目的で渡航するようであれば、「ウイルスに対する責任感がないのか」などと批判の目で見られるという。
普段の会話の中でコロナウイルスのことを「ただのウイルス」として扱おうものなら、涙しながら憤慨するイタリア人もいる。「こんなにイタリアが大変だというのに、まだ他の国の人たちは他人事なの。同じ過ちを繰り返さないように、どうにかしようと努力しないの」