「マヨネーズが嫌い」 ロシア人No.1シェフのこだわりと心意気

「ホワイト・ラビット」のシェフ、ウラジミール・ムーヒン


続く「オクローシカとミルクマッシュルーム、ボロディンスキーパン」は、緑のトマトを乳酸発酵させた酸味だけを使った逸品。ホースラディッシュのクリーム、パセリのジュースにカリッとした皮と、モラセスの甘みが感じられる黒パンが添えられている。12世紀に端を発し、1547年に発行されたロシアの家庭の生活指南書「ドモストロイ(Domostroy)」にも載っているメニューだという。

「蕎麦のお粥、ウニ、ホワイトチョコレート」のベースは、祖母のレシピの蕎麦のおかゆだ。材料のミルクを何かに置き換えられないかと考えた際に、ムーヒンはホワイトチョコが思い浮かんだのだそうだ。ソースに使うだけでなく、最後にホワイトチョコを削ってかけ、甘い香りを強調している。ほぼデザートに近い味のバランスだったが、カカオバターの旨みを引き立たせ、白い花の香りのインパクトも強く、ドライなイタリアの白のペアリングで、すっきりといただけた。

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「ピクルス」は、かぼちゃのなかで発酵させたアスパラガスのピクルスに、サワークリームが添えてあった。硬い根元のところだけほんの少し火を入れているが、パリパリとした浅漬けのような食感が楽しめる。

「カムチャッカ 、赤キャビア、黒いレモン」は、海水で茹でたタラバガニに、発酵レモンを削りかけたもの。カニと青リンゴという定番の組み合わせに、イクラのプチプチとした食感。つぶ貝と前の皿で使ったホタテのヒモの出汁と鳥のジュ(肉汁)が添えてあった。

「和牛リブ、きのこ 、ロシアのベリー」は、低温でゆっくりとシチューにしたショートリブに濃厚な仔牛のジュを纏わせ、ガーリックの効いた日本産の黒とピンクのシャンテレール茸、紫蘇の花やレモンジュース、ディルのオイルを合わせてある。

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「デザートとしてのグリーン」は、甘い野菜のチップ、香ばしいかぼちゃの種のオイル、アボカドのムース。サラダの材料に使うような野菜をデザートに使うという意外性ある皿だ。

「素晴らしい人生の花」は、白樺の樹液を使ったデザートで、空想上の白樺の花をVRで再現していた。スマホにアプリをインストールし、デザートにかざすと、ディスプレイ上に3Dの花が咲く映像が浮かび上がる仕掛けだ。



最後の「ロシアの冬 シーバックソーンを秘密の部屋で」は、小さなリキッドが入った冷たいボンボンを、真っ暗ななかでいただく。グリーンとオレンジのボンボン、それぞれの味を当てるという趣向もある。答えは、ぜひ実際に店を訪れて、試してみてほしい。
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文=仲山今日子

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