そんなビジョンを持ち、眠りの世界に挑むのが、ニューロスペース代表の小林孝徳だ。「眠りは、技術です。だから上達します」と掲げる同社は、デバイスを用いて睡眠を解析し必要に応じたソリューションを提供している。
まだあまり身近でない睡眠解析だが、どれほど専門的で、どれだけの効果があるのか。そこで今回、小林と同じく“バイタルデータ”を用いて社会課題に取り組む遺伝子ベンチャー、ジーンクエスト代表の高橋祥子が、実際に睡眠改善を体験。小林とともに、そのビフォー・アフターを振り返った。
──高橋さんは以前から睡眠に対して課題を持っていたのでしょうか?
高橋:もともと自分のデータを分析するのが好きなので、毎日の体重や体温、摂取カロリーなど、いろんなデータを取っていました。睡眠も時間を測ってはいたのですが、睡眠のデータというのはとりにくくて、その内容までは見れていませんでした。
小林:あるイベントでそんな話をしたのをきっかけに、「睡眠を見える化してみよう」ということで、我々の睡眠計測デバイスを使って計測してもらいました。このデバイスはマットレスの下に敷くだけで、手首や頭などに何も装着しなくていいんです。まずは普段の睡眠の傾向を見るために2週間ほど使ってもらいました。加えて、睡眠に対して抱えている課題をヒアリングしました。
高橋:私は昔から寝起きが最悪なんです。軽い頭痛がして、なかなか起きられない。遺伝子的に自分が“ロングスリーパー”であることがわかっているのですが、短時間睡眠の人ってなんかかっこいいので、それがコンプレックスで。
特にスタートアップの人はあまり寝てないというイメージもあるので、取材などで「どれくらい寝るんですか?」と聞かれて、長めに寝ていると答えるのが恥ずかしかったりもしました。
実際、起業してすぐの頃は3〜4時間ぐらいしか寝ていなくて体調を崩し、それで「これじゃ継続可能性がない」と気づいて、睡眠も仕事のひとつとして管理するようになりました。といっても、グーグルカレンダーで睡眠時間を予約するぐらい。でも、そうして平日にちゃんと寝ても、土曜日はほとんど午前中に起きたことはなかったです。
──では実際にデータを取ってみて、小林さんはどう分析したのでしょう?
小林:高橋さんの自覚の通り、睡眠時間が長いという特徴がありました。平均的に8〜9時間くらいは寝てます。あと、データからもヒアリングからも、比較的夜型ということがわかりました。
睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があるのはご存知の方も多いと思います。レム睡眠は、眼球と脳が比較的活発に動いている状態。一方のノンレム睡眠には3段階あり、ステージ1・2がライトスリープ、ステージ3がディープスリープ(専門用語では徐波睡眠)と呼ばれています。
その中分類でいうと、高橋さんは全体的に眠りが浅いライトスリープの傾向が強い。ノンレムの中でも浅い睡眠が多く、後半になるとレムも多いという特徴もありました。そして、すごく夢を覚えているんです。
【改善前の睡眠データ】ノンレムの中のステージ3というものが前半には出ているが、割合として少ない
高橋:毎日3本立てくらいで夢を見ていて、その内容を過去2〜3週間分くらいを覚えています。続いたストーリーではなく、サザエさんの3本立てみたいにすべて別の内容。夢の中でも仕事しているから、現実との境がなく、会社のスタッフに「この前伝えたあの話だけど……」みたいに夢の延長で話をして、コミュニケーションで困ったこともあります(笑)。