──しかし、行動は習慣化できなければ一時的なものになってしまいます。ダイエットも同じで、情報ではわかっていても続けるのは難しいものかと思いますが、実際いかがでしたか?
高橋:寝る前のスマホ読書は5年ぐらい続けている習慣で、やめられないと思っていました。でもやめたことによる効果がデータで見えて、睡眠が改善していくのがわかり、すぐに断てました。
小林:我々はサイエンティストなので特に、エビデンスを示されると弱いですよね(笑)。でも一般の人も、自分の行動がデータで目に見えるようになれば、続けるモチベーションになると思います。改善に限らず、例えば夜更しをしたらどう睡眠が乱れるかも客観的に見れると、身が引き締まるかと。
高橋:体温調整に失敗した日は睡眠が浅くなりました。お風呂を上がってからいろいろやっていたら体が冷めきって、そこから寝た場合はディープスリープの割合が減っていましたね。
続けるというころでいうと、良かったのが、カウンセリングの時に「週7日じゃなくてもいい」と言われたこと。「まずは週数日からでも」と聞いて、そのくらいなら……と取り組みやすかったです。
小林:絶対に全部やらなくてはというタスクのようになっちゃうと続かないんですよね。だから、まずは毎日でなく週2日からでも始めてみること。するとデータにも表れるし、連動するように変化を“自覚”できるようになります。高橋さんの場合は日中の集中力や寝起きが良くなったなど、自覚のない寝ている間でなく、日中にその良さを感じられるのは大きいはずです。
──どのような変化を感じましたか?
高橋:まずデータでビフォー・アフターを比べると、ディープスリープの割合が、平均6.4%から25%近くまで上がってるんですよ。正直最初はそこまでとは思っていなかったので、こんなに変わるのかって驚きました(笑)。
【改善後の睡眠データ】ディープスリープの割合が増加したほか、レムとノンレムのリズムも改善している
小林:高橋さんの直近のデータを見て思ったのが、明らかにグラフの形が美しくなっているということ。ライトスリープに偏っていたのが、ディープの部分も規則的にちゃんと出るようになっていて、コントラストも綺麗です。ちゃんとリズムが整ってますよね。
ベッドでの習慣とか体温調整とか、今回取り組んでいただいたのは、高橋さんにしか当てはまらないソリューションではありません。睡眠の基本というか、睡眠技術の基本的なところで、それだけでもかなり改善されます。
でもやっぱり睡眠は人それぞれ違うものです。必要な長さも違えば、朝型・夜型という性質もある。まずは自分の特徴を知り、基礎をやったうえで、適切な過ごし方、さらには「働き方」を考えるのも重要だと思います。これは個人でも、その多様な個人を擁する企業側でも。その辺りについては、対談の後編に続きます(後編は3月16日公開)。