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朝日新聞編集委員(朝鮮半島、米朝・日米関係担当)

(Noel Celis - Pool / Getty Images)

新型コロナウイルスの流行により、世界の耳目が集中している中国。日本政府にとっても4月の習近平中国国家主席の国賓訪問に影響が及ぶのかどうかが関心事項の一つになっている。

そして、中国との関係はいつにも増して重要な外交案件に浮上している。ウイルスという新たな懸案の発生もそうだが、成果が乏しいと言われてきた安倍外交のレガシーとなるかどうかの分岐点にさしかかっているからだ。今、関係者をやきもきさせているのが、「新時代」という言葉の行方だ。

「新時代」は習近平政権のキーワードだ。日本の中国専門家は「1949年に発足した『新中国』、鄧小平氏が推進した改革開放を意味する『新時期』を意識した言葉だ。習氏が鄧小平氏を上回り、毛沢東氏と肩を並べる指導者だと強調する狙いがある」と語る。「周囲から要求ばかりされていた従来の中国ではなく、中国がルールを決めて周辺国が従うという新しい時代を夢見ているのかもしれない」

そして、安倍晋三首相は2018年10月に訪中した際、習近平氏との間で「日中新時代」に向けた3原則で合意した。昨年12月25日には、安倍首相と李克強首相が成都で会談し、「日中新時代」を切りひらいていく決意を共有した。

安倍首相は第1次政権時代の06年10月、訪中して胡錦濤国家主席との間で「戦略的互恵関係」で合意した。当時、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題でオールストップしていた日中関係を再び動かすため、二国間関係だけにとらわれず、国際社会のためにも関係を強化すべきだという狙いがこの「戦略的互恵関係」に込められていた。

安倍首相にしてみれば、日中関係を動かした自負心もあっただろう。習近平政権は胡錦濤政権がつくった言葉は使わない。18年の3原則合意を締結した当時、日本側には、新天皇の即位と改元が決まっていた背景もあり、習近平政権が望む「新時代」という言葉に応じた経緯があった。

そして、相変わらず、「新時代」という言葉へのこだわりを感じさせたのが、秋葉剛男外務事務次官と中国の楽玉成外務次官が1月14日に中国・西安で行った日中戦略対話だった。日本外務省は対話の結果についてホームページで、習氏の国賓訪日を有意義なものとする議論を行ったなどと説明したが、「新時代」という言葉には一切触れなかった。一方、中国外交部は「新しい時代と世界の大きな変化に直面して」という楽次官の言葉を紹介し、「新時代」へのこだわりを示した。

文=牧野愛博

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