──日本と海外の「ブランド」観の違いとは。
並木:米国の場合は「消費者にどう買わせるか?」というマーケティングの視点が常にある。その結果、自ずと製品開発・商品開発の視点がよりトップダウンに近いものとなる。また、ブランド構築もシステマティックなアプローチをとる。欧州では、ラグジュアリー製品や食品などからもわかるように、ブランドが“血肉”となっている。そもそも企業経営がブランドを中心に回っている。
日本の場合は「自然発生的」に生まれたケースが多い。まず、創業者がいる。その理念に賛同して人が集まり、チームができる。内需が拡大し、会社が成長する。このサイクルが繰り返される──。トヨタ自動車やホンダ、ソニーに見られるように、高度経済成長の頃は特にこうしたケースが多かった。
そのため、日本ではブランドが「事業の後追い」になってしまう。テクノロジーの進歩やコミュニケーションの在り方が変わるなか、事業は日々、その姿形を変えている。すると、ブランドがついてこられなくなる。これからは刻々と事業が変化するので、意図的に先んじてブランド構築を仕掛けていかなければ、いつまでも自社のブランドを活用できないだろう。ブランドは企業にとっては貴重な資産。
だが、それも使えなければ意味がない。今まではたとえ自然発生的であろうと、ブランドをもっているだけで十分だった。これからはそれを使えるように先駆けて行くことが重要となる。これが日本と欧米の大きな違い。ブランドを資産価値として使えるような仕組みを作るのがこれからの経営のカギだ。
──具体的にはどのように実現できるのか?
並木:米国では、ブランディングの手法は「形式知化」されている。例えば、弊社が実施しているブランド価値ランキング「Best Global Brands」などもブランドを可視化することを目的に作られた。欧州では「暗黙知化」されているが、その重要性は十分に理解されている。同じ暗黙知でも、日本の場合はあくまで結果にすぎない。欧州の形を目指すのはハードルが高いだろう。
しかし、ランキングや指標を通じて「形式知化」することでブランディングを理解できれば、米国のようにシステマティックにブランドを構築するのはさほど難しくない。事実、海外に進出している日本企業はその重要性を認識している。弊社に来るコンサルティング依頼も海外での取り組みに対する危機感によるところが大きい。そこが各社にとっての課題であり、いちばんの伸び代でもあるからだ。
ベスト・グローバル・ブランド2019
1. アップル
2. グーグル
3. アマゾン
4. マイクロソフト
5. コカ・コーラ
6. サムスン
7. トヨタ
8. メルセデスベンツ
9. マクドナルド
10. ディズニー