インターネット業界を代表する企業・フェイスブックの日本法人代表から一転、なぜ長谷川はいわゆるD2C領域で事業を展開しようと思ったのか。その理由を長谷川は、これまでのキャリアを振り返りながら、こう語る。
「ブランドとモノづくりをP&Gで経験し、ECの可能性を楽天で知り、フェイスブックとインスタグラムでグローバルなテクノロジーの力を知った。これまでの経験を掛け合わせていった結果、世に言う“D2C”に行き着いた、という感じです」
長谷川は新卒でP&Gに入社。「パンパース」などのブランドマネージャーを経験した後、シンガポールで「ブラウン」や「SKII」などのリージョン責任者を経験。その後、楽天入社し、グローバルマーケティングの責任者を務めた経験を持つ。
「P&Gで10年くらいブランドづくりに携わってきました。さまざまなブランドに携わる中で分かったのは、素敵なブランドは消費者の生活を良くするということ。いいブランドをつくり、いい製品を提供すれば人々の生活を豊かにできるんですよね。
メーカーでブランドづくりを経験した後、楽天に行ったら“オンラインで物を売る可能性”に気づけた。インターネットを使えば日本中、世界中に物を売れる。そして、この流れは今後どんどん加速していくだろうな、と思いました」
そして2015年から3年半代表を務めたフェイスブックでは、SNSがもたらす“人のつながり”が持つ可能性を知り、地方活性化プロジェクト「コミュニティの力、起動!」を立ち上げることで、地方には素晴らしいものがたくさんあることを知った。
「MOON-Xは僕のキャリアの集大成と言いますか……。これまでの経験があったから、今がある。すごく思い入れが深いんです」
写真=MOON-X提供
3つの条件が重なり、クラフトビールにたどり着く
立ち上げるブランドも様々な選択肢がある中、なぜクラフトビールから手がけることにしたのか。長谷川によれば、クラフトビールの美味しさを感じた原体験、人の縁、市場規模の3つから立ち上げを決めたという。
「フェイスブックジャパン在籍時、よく本社があるサンフランシスコに出張へ行く機会ありました。それまで僕は4〜5年ほどビールは飲んでいなかったのですが、出張先で偶然、IPAを飲む機会があったんです。それで飲んでみたら、今まで飲んできたビールとは異なり、すごく美味しかった。こういったクラフトビールを日本でもつくり、自分と同じような体験を多くの人に味わってもらいたい、と思ったんです」
その後、知人の紹介で木内酒造の人と出会い、クラフトビールに対する思いを語ったところ意気投合。市場規模が拡大しているもわかり、一番最初にクラフトビールのブランドを立ち上げることにした。