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AI通信「こんなとこにも人工知能」

metamorworks / Shutterstock.com

米ラスベガスで開催されたCES 2020では、自動運転や新時代のモビリティに関する話題が一際大きな注目を浴びた。そんななか、新興自動運転スタートアップとして注目を集めるブルースペース.AI(Bluespace.ai)のCCO、Christine Moon氏の興味深い発言が報じられた。

Moon氏は「ディープラーニングは万能のように思われているが限界がある。説明不可能な“ブラックボックス問題”などの側面がそれにあたる」と指摘。レベル5の自律走行(ドライバーが運転を行う必要が完全になくなる段階)を目指すにあたり、「ディープラーニングへの依存度を最小化した上で、周囲の環境を正確に認識できるソフトウェアを開発していく」と目標を語っている。

ブルースペースAIは、2019年4月に設立された大量輸送車両用のソフトウェアを開発するベンチャー企業。自動運転スタートアップは、主に低速車両や個人車両に焦点を当て、ラストワンマイルなどの課題解決を目指すことが多いが、同社では大量輸送用車両の自律化を短期間で促すソフトウェアソリューションを開発。都市のモビリティに関わる、より広範な社会課題を解決することをミッションとして掲げている。

ブルースペースAIのメンバー構成もとても興味深い。CEOのJoel Pazhayampallil氏は、2019年初めにアップルに買収された自動運転スタートアップ、ドライブ.AI(Drive.ai)の共同設立者で、前出のChristine Moon氏は、ドライブ.AIでグーグルのネクサスプログラムに従事してきた人物。他にも米国各地の自動運転関連企業で働いたメンバーが集結しているという。いわば、従来の自動走行スタートアップの限界や盲点に気づいた起業家、エンジニアが集まった企業といえる。

Moon氏は、ドライブ.AI時代に「ディープラーニングではレベル4は実現できても、人間のドライバーが関与しないレベル5を実現することが難しいと感じた」とメディア取材に答えている。例えば、ディープラーニングを使用した場合、どのような理由で周囲の環境を認識したかが不透明なため、仮に事故が起きた際に原因を明確に究明することが難しいなどがその理由のひとつだ。

また、「自律走行のためには大量のデータが必要という命題から捨てなければならない」と指摘。実際には多くのデータが必要なことは事実ではあるが、データがすべてではなく、またデータに依存することは高コスト構造を生み出すしかないと説明している。

なおグーグルなど大手IT企業が自動運転タクシーの商用化に乗り出すなか、ブルースペースAIでは大衆交通手段である自動運転バスの市場を狙っていきたいとMoon氏。現在、人件費の削減、また多くの人々が利用するという理由から、バスの自動運転を求める世界の都市が多いという。

ディープラーニングだけでもレベル5の自動運転技術が実現することができるのか、またどのような移動手段の自動化が世間との軋轢を避けつつ需要を喚起できるかはまだもって未知数だ。ただブルースペースAIのような新手のベンチャー企業が続々と登場し、新たな疑問や試みを積極的に提示することにより、産業全体が確実に前進していくはずである。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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