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ゴールデン街、外国人観光客との向き合い方
もう一つ歌舞伎町の観光資源として名前が挙がるのはゴールデン街だろう。ここはロボットレストランとは違う様相を呈している。
2000年代から徐々に外国人観光客は増え始めていった。各お店もインバウンドを意識するようになり、少しずつその恩恵にあずかる店も増えてきた。ゴールデン街のお店は10席くらいのお店が殆どだ。そこに団体の観光客を受け入れたら、常連さんは入れなくなる。
それでも団体のお客様の魅力は大きい。毎日団体の観光客を受け入れることが出来れば今までよりも売り上げは上がるだろう。うちのグループもゴールデン街に3軒あるが、外国人観光客を優遇する施策を採り入れ始めていた。
そんな矢先に起きた3.11。ぱったりと外国人観光客は来なくなった。我々は不確実な外国人観光客頼りにしてはいけないということを突き付けられたのだ。そして3.11を乗り越えてお店を継続させることが出来たのは、この店を潰してはいけないと、足しげく通ってくれた日本人の常連さんたちなのだ。「外国人観光客」という一括りの顔の見えないお客さまではなく、○○さん、○○さんという一人一人のお客様だったのだ。
それ以降、外国人観光客頼りのお店は殆どなくなった。うちもそうだ。さらに、外国人観光客については不確実性が高いというだけじゃない大きな課題がある。
マナーの問題だ。一括りに外国人観光客はマナーが悪いと言ってはいけないが、問題を起こす確率は日本人より高いというのは事実でもある。
ここに記しておくが、ロボットレストランもゴールデン街も、外国人観光客の殆どは欧米人とオーストラリア人である。
先日行われたラグビーワールドカップの時、沢山の方々が歌舞伎町に訪れた。しかしワールドカップが始まってすぐに、弊社のゴールデン街の2階のお店が外国人を入店禁止にしたのだ。
僕はその通達をグループラインで見て驚いた。理由は主に欧米人が暴れる日が続いたからだそうだ。
ゴールデン街は1人でお店に立つことが多い。うちの2階の店舗も基本はそうだ。そこに屈強な身体をした外国人が大人数で入ってきて暴れられると手が付けられない、ということだそうだ。実際に怖い思いをした人が出て、そういう決断に至ったそうだ。
そうしたのはうちのお店だけではなかった。実際に警察沙汰の事件も起きた。外国人によるスリの画像もSNSで出回った。ゴールデン街に近い洋服屋でも、外国人が暴れて逮捕された。
路上飲酒がトラブルを引き起こす
この大きな要因は、日本では路上で飲酒が出来るということだろう。コンビニでお酒を買って路上で飲む人が沢山いるのだ。その流れでお店に流れ込んでくるのだ。世界でも珍しいという、外で歩きながら酒を飲めるという行為は観光客にとっては魅力的なのだろう。
旅行先でその国独特の文化に触れることこそが旅行の魅力だ。その気持ちはわかる。しかし酔っぱらったからといってなぜ見知らぬ土地で大暴れが出来るのだろうか。それもまた文化なのだろうか。
これは、これからオリンピックを迎える上で大きな課題だと思う。問題を未然に防ぐために、路上飲酒を禁止にするのか?それとも路上でお酒が飲める国というユニークさを観光資源として担保するのか?早急に議論が必要だろう。
ロボットレストランでも、欧米人の行儀が悪くないか聞いてみた。
「そうですね。お酒を提供していますので飲んで騒いだり、暴れたりするお客様は毎日のようにいらっしゃいますね」
と、笑顔で答えてくれた。トラブルが起きることは織り込み済みということだ。
さすが歌舞伎町。ナイトタイムエコノミーを実践することはそんな容易いことではないのだ。ロボットレストランの成功例は、観光客を呼び込む経営努力と、歌舞伎町で培った問題対応力という特殊能力の上で成り立っている奇跡の店だということなのだ。
僕は常々歌舞伎町で働いている人間のトラブル回避能力は色んな所で役立つと思ってきた。オリンピックを契機に快く外国人を迎え入れることが出来る能力も、一つの文化として評価されることを期待している。