ホストからキャリアをスタートし、その後経営者として手腕を発揮、歌舞伎町商店街振興組合の理事も務める。ホストのボランティア団体「夜鳥の界」を中心となり立ち上げ、ホスト独自の社会的貢献を目指し、街頭で定期的に清掃活動を行う。
本屋「歌舞伎町ブックセンター」を立ち上げるなど、ジャンルを超えた多様な活動で知られる。 そんな手塚氏の次の一手が、なぜデイサービスなのか。
氏の経営するホストクラブで話を聞いたところ、「人間が働くこと」の本質を突く、独自の哲学を語ってくれた。
ホストの「プロフェッショナルサービス」、介護にも通じるのでは
このたび開設した「新宿デイサービス早稲田」は最大10人程度の通所介護施設だ。介護士を含むスタッフ5人が勤務する。「まだまだ勉強不足で模索中」と手塚氏。小規模だが、ゆくゆくは複数の拠点を構えることを視野に入れている。
通所介護は、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や、心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として行い、利用者が通所介護の施設に通うスタイル。施設では、食事など日常生活上の支援などを行う。
きっかけは以前、介護を手がける企業で講演を頼まれたこと。「ホストの接客技術、プロフェッショナルサービスは介護にも通じることがあるのでは」と考えたという。
手塚氏の考える「プロフェッショナルサービス」とは一体何なのか。
「マニュアルサービスは誰であろうと変わらないサービスが求められる一方、プロフェッショナルサービスはお客さんと一緒につくるサービス。介護も、マニュアル通りではなく、人それぞれのニーズや思いを汲み取った個別対応が必要という意味で、プロフェッショナルサービスだと思う」
さらにこう語る。「その日、一緒に過ごすことがグッドタイムであるかどうかが非常に重要。『君だから会いたい』『あなたと過ごせたから楽しい』という存在になれる力がホストにはあるし、その力をもっと社会で活かしたい」
人は働かなくて済むようになった時、何をすべきか
世はプラットフォーマー全盛。「万人に受け入れられるサービスや技術を提供するプレーヤーが強い」と言われたり、「仕組みを作ったもの勝ち」と言われたりする。
そんななか、あくまでも対面での「プロフェッショナルサービス」にこだわる手塚氏。「すごく利益を出したい、というわけではない。相手がいるから、自分がいる。人と人の関係性を大事にする仕事を追求したい」。そう話す手塚氏の真意は、明快だ。
「将来、人工知能の発達や技術の進歩などで人が働く必要がなくなるかもしれない。効率や便利が行き届き、人が働かなくて済むようになった時に、僕らは何をするのだろう。やはり人として生きる、人と関わり合う面白さを追求するのだと思う」
ホストクラブやバー、美容院の経営、清掃活動、本屋、そして介護……。一見バラバラな活動に通底しているのは、人としての「血の通った仕事」への情熱だったのだ。