体はそれほど睡眠を必要としていないかもしれないが、脳は確実に睡眠を必要としている。眠っている間には、頭の中で多くの“清掃作業”が行われている。慢性的に睡眠不足になると、この大切な作業が阻害されるのだ。
このほど発表された2つの新たな調査では、睡眠不足が翌日の思考スキルや、潜在的に危険なごみのような物質を除去する脳の能力にどのような影響をもたらすかが示された。
最初の研究はミシガン州立大学のものだ。実験では、77人が一晩中眠らずに研究室で過ごし、63人は帰宅して普通に睡眠を取った。参加者は全員、調査開始前に休息を取っており、それからグループに分かれて徹夜するか通常の睡眠を取った。
研究者らは実験の参加者に対し、その日の晩と翌朝に精神運動機能検査(PVT)と呼ばれる注意力検査と、時間が中断された後も順番を守って一連のステップを踏むUNRAVELメソッドと呼ばれる認知力の検査を行った。
その結果、睡眠不足の参加者はその他の人と比べてテスト結果が顕著に悪かった。睡眠不足の参加者のUNRAVEL検査の結果では、中断が入った後のエラー率は前晩の段階では約15%だったが、それが翌朝には30%に上がった。それと対照的に、休息を取ったグループは前夜と翌朝の成績がほぼ同じだった。また睡眠不足のグループは、その他のグループに比べて翌朝の注意力が大きく欠如していた。
研究の著者であるキンバリー・フェンは発表の中で「私たちの調査により、睡眠不足はプレースキーピング(複雑なタスクを、ステップを抜かしたり繰り返したりすることなく指示された順番通りに行うこと)で間違える確率を倍増させたり、注意ミスを3倍にしたりと、驚くような影響があることが分かった」と述べた。
「睡眠不足の人はまさにあらゆることに注意しなければならず、大きな間違いを犯さないと信じることは全くできない。例えば車を運転している場合など、こうした間違いが悲劇的な結果につながることも多い」
私たちが行う全ての作業が睡眠不足の影響を受けるわけではないが、影響を受ける作業は多く、その分野も多岐にわたる。「睡眠不足は、人生のあらゆる側面において広範な損失をもたらす」とフェンは述べた。
この調査では、睡眠不足がほぼ即座に認知能力に影響を与えかねないことが示されたが、2つ目の調査は睡眠不足により、認知能力の低下や認知症など長期的に見てより深刻な問題のリスクが生じかねないことについて分析した。