中国は「発展途上国」として扱われることもあるものの、実際は西側の多くの国よりも発展している。持続可能なハイテク地区をうたう蘇州工業園区は韓国のサムスン電子、ドイツのシーメンス、オランダのフィリップスなどを誘致し、ほかにも世界の多くの企業が製品の生産・輸出拠点としている。
蘇州工業園区の管理委員会主任、周旭東は「世界最高の頭脳に対して、われわれを選んでもらうよう説得する上では、柔軟で寛容なアプローチが極めて重要だ」と述べている。同区は情報システムやナノテク、バイオ医薬、ビッグデータとクラウドコンピューティングに基づく人工知能(AI)など、都市をより環境に優しく、望ましくすることができるような高付加価値の産業も擁している。
蘇州工業園区の商品・サービス生産額は2016年の実績で334億ドル(現在の為替レートで約3兆6600億円)。これは前年比7.2%の増加だった。また、マサチューセッツ工科大学(MIT)、ハーバード大学、オックスフォード大学など世界の一流大学を出た優秀な人材を引き寄せているほか、米マイクロソフトや米アップルも拠点を置いている。中国の3大IT企業である百度(バイドゥ)、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)が進出しているのは言うまでもないだろう。
中国は、蘇州工業園区のようなモデル地域を世界に輸出できると考えている。実際、世界で提案されているスマートシティー約1000カ所のうち、半分の約500カ所は中国にある。
筆者は先月、香港のNPO「中米交流基金」と共に蘇州工業園区の視察ツアーに参加した。蘇州工業園区は経済モデルであると同時に、スマートリージョンだとも見なされている。スマートリージョンとは、インターネットやクラウド技術によってデータを収集し、エネルギーの利用や交通量、医療サービスなどの向上を図る地域のことだ。
蘇州工業園区の担当者は「テクノロジーのエコシステムを培うことに力を入れており、特に、新しいテクノロジーやコンセプトで最先端を行くスタートアップの育成に重点的に取り組んでいる」と話していた。