デイビッド・ヴィズマンズCPO
「1つの案件あたり2週間ほどかけてテストを繰り返しています。常に何らかのABテストが行われているため、同じ表示画面を同時に見ているカスタマーはいないのではないでしょうか」と最高プロダクト責任者(CPO)のデイビッド・ヴィズマンズも語るほどの徹底ぶりだ。
さらに現在、本社と同じアムステルダムの北地区(Nord)に、新たにテクニカル部門のための新オフィスを建設中とのこと。グリーンやサステナブルをテーマにした新社屋には、5000人ほどが本社から移動予定。彼らの本気がうかがえる。
本社のテラスから。写真奥のほうが北地区。人々が集中しすぎたため、工場などがあった北地区を開発。新たな観光地や美術館なども建つ。
「また、世界の人々を旅行でつなぐことを仕事にするという我々の重要なカルチャーのひとつに、ダイバーシティがあります。本社だけで100以上、世界では140カ国の人たちが一緒に働いているという多様性こそが私たちの強みでもある」
従業員の宗教もさまざまであることから、祈りのためのメディテーションルームもある
ブッキング・ドットコム従業員全体のうち約50%が女性であり、とくに日本においては、管理職部門の50%以上が女性だという。
2つの大きな社員食堂とカフェバーがあり、多国籍料理を提供。ハラール、ヴィーガン、ベジタリアンなどにも対応しており、1日2.25ユーロで食べ放題
日本政府と連携して民泊を後押し
では、その日本におけるビジネスはどうか。「日本は弊社にとって非常に重要なマーケットであると認識している」とフォーゲル氏が言うように、ブッキング・ドットコムは、すでに10年前の2009年から日本でのサービスを展開している。
楽天トラベルやJTBなどに比べれば、ブッキング・ドットコムは、日本人が国内旅行で利用するというよりは、訪日外国人のためのサービスというイメージが強いかもしれない。ところが、実は「日本における宿泊予約数のうち、約50%は日本人による国内旅行のための利用」だとフォーゲル氏は明かす。
とはいっても、東京オリンピック期間中に訪れる旅行者の数は6000万人とも言われている。そのために、どんな部分にブッキング・ドットコムは力を入れているのか。
「『旅館』の宿泊予約を重視しています。これまで私たちは正直なところ、旅館の予約があまり得意ではなかった。しかし、多くのテストを実施しながら、食事プランを選べるように改善を進めています。我々は旅館に泊まるということ、旅館への宿泊を通して日本の文化を理解してくれる顧客を増やしたい。また、旅館側にとってもそのような『良い顧客』に来てもらうことが重要だと考えています」
さらにフォーゲル氏は続ける。
「東京オリンピックの期間には、膨大な旅行者が訪れることが予想され、現状のベッド数では確実に足りない。宿泊したい人たちをすべて受け入れることは不可能です。そのため、私たちは日本政府とも連携し、決められた枠組みのなかで、日本の民宿のオーナーが責任ある形で自分の部屋を貸し出すことができるように、サポートしていくつもりです」