ビジネス

2019.11.26 07:30

ブッキング・ドットコム グレン・フォーゲルCEOが語った新戦略


新戦略でDiDiやGrabも利用可能に

最後にブッキング・ドットコムが目指す未来の旅のかたちを聞いた。

「1カ所にアクセスすれば、旅行にとって必要なものがすべて予約でき完了できること。それが、我々が目指している『コネクティッド・トリップ(Connected Trip)』の姿です」

ブッキング・ドットコムが「旅の入り口」となり、宿泊施設だけでなく、航空券やレンタカー、現地でのアトラクションや体験まで、すべてを一括して予約できるプラットフォームの実現を目指し、サービスの拡大・強化を進めていくという。

このコネクティッド・トリップという新戦略は、ユーザーの旅の利便性を高めるとともに、旅にまつわる予約のすべてをもれなく収益化する狙いがある。

まずは、東南アジアを中心にサービスを展開するタクシー配車サービス「Grab」と提携し、会員登録をしなくても、ブッキング・ドットコムのアプリからそのまま配車ができるようになった。

さらに、中国のタクシー配車サービスである「DiDi」とも提携しているため、Grabと同様、いずれブッキング・ドットコムのアプリから配車することが可能になるという。

「我々は、いかにして『顧客体験をシンプルにするか』という視点から、継続的なサービス改善を進めています。このコネクティッド・トリップを完全に実現するには少し時間がかかるかもしれません。最大のチャレンジですが、最優先事項と決めて進めていきたい」

フォーゲル氏はCEOに就任してから、この「最優先事項」に集中するため、これまで取り扱っていた音楽コンサートやスポーツイベントのチケットサービスを廃止した。「旅行者にとって、彼らの視点から最も重要でニーズが高いことは何かと考え、構築するために決断した」という。その背後には、次のような新リーダーとしてのモットーがあった。

「私が大事にしているモットーのひとつは、とにかく『聞く』こと(Talk less, listen more)。顧客、従業員、ユーザー、パートナー、コミュニティ、すべての人々の声にまずは耳を傾けること。自分から先に話さないことを徹底しています。

ふたつ目は、『SHOSHIN(初心=beginners mind)』。学んだことや自分が知っていることをベースに物事を考えるのではなく、新しいものや違うものを受け入れるまっさらな心から始めること(Start with a blank mind)。これらはキャリアを重ねれば重ねるほど、簡単なようでいて、実は難しいことだと私は思うのです」

オランダというヨーロッパの小国からスタートしたブッキング・ドットコム。新リーダーが全力で進める「コネクティッド・トリップ」戦略は、今後ますます加速することだろう。


Glenn D. Fogel(グレン・フォーゲル)◎ブッキング・ドットコム最高経営責任者(CEO)兼社長。ブッキング・ホールディングス社長兼最高経営責任者も務める。ハーバード大学法科大学院(Harvard Law School)卒業。航空輸送業界に特化した投資銀行家としてキャリアを積み、グローバル資産管理会社のトレーダーを経て、2000年ブッキング・ホールディングスの前身プライスラインに入社。2019年6月より現職。

文・写真=松崎美和子

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