9割が輸入食材の国、シンガポールで話し合われた「地産地消」

第3回インターナショナル・シェフズ・サミット・アジア(ICSA)

最近、食の世界では、地元の食材を使い、その土地の風土を表現していくのがブームだ。郷土食であるローカルフードやB級グルメのようなストリートフードを、高級料理にアレンジした店も注目を集めている。しかし、食料自給率10%以下、食材は輸入がほとんどというシンガポールでは、どのようにそれを実現していくのだろうか。

この問題をテーマに、シンガポール政府観光局のサポートのもと、今年10月に食のサミット、第3回インターナショナル・シェフズ・サミット・アジア(ICSA)が行われた。話し合われたのは「Sourcing Locally, Innovating Globally」、地元の食材を使い、それをいかにグローバルなレベルに進化させるかについてだ。

イベントは台湾のメディアグループFimmediaの主催で、前回2回は台湾で行われたが、今回初めてシンガポールでの開催となった。アジアのベストレストラン50に名を連ねるトップシェフ11人によるパネルディスカッションや、コラボレーションディナーも行われた。

シンガポールの食材を70%使ったディナー

イベントに参加したレストランのなかでひときわ異彩を放っていたのが、シンガポールの地元食材を90%使い、モダンシンガポール料理を提供する「ラビリンス」だ。

ミシュランの1ツ星も獲得したシンガポール人のオーナーシェフ、リーガン・ハンは、「この国にもかつて農園はあったし、シンガポール産の食材は味も良い。それらの食材を使ったシンガポール料理をつくっていきたい」と、数少ない生産者を訪ね、地元の食材を昇華させたシンガポール料理を提供している。


リーガン・ハン(左)と稗田良平(右)

サミット期間中に行われたコラボレーションのうちの1つは、このラビリンスと台湾の祥雲龍吟(稗田良平料理長)によるディナーだった。打ち合わせのためシンガポールを訪れた稗田は、近海で獲れたハマグリを試食して、「とても旨味の強いハマグリ」であることに驚いたという。

そして稗田は、「シンガポールの食材でも、ファインダイニングの食材になりうる」と、自らもシンガポールの食材をメインにコラボ料理をつくることを決めた。台湾からは、地産の鰹節と昆布でとった出汁などを持ち込んだものの、シンガポールの食材を全体の約70%も使うディナーとなった。

この日手に入ったのは、シンガポールで獲れた天然のマナガツオ。稗田はあっさりとした味わいを補うためにフリットにし、香りをプラスするために、衣に青海苔を加えた。上からリゾットをかけて、サクッとした衣ともっちりとしたリゾットの米の食感の対比を楽しめるようにした。

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マナガツオのフリット
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文・写真=仲山今日子

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