シネマの女は最後に微笑む

柴咲コウ(Photo by Rindoff Petroff/Dufour/Getty Images)

同性愛者差別解消への取り組みが世界的に進められていると言われる昨今だが、イスラム諸国を中心として国連加盟国の約4割では、未だ同性同士の性行為が違法とされている。

表向きは合法としつつ、差別的な法律がある国も多い。最近同性愛者差別問題が頻繁に浮上しているのが、ロシアだ。

ロシアの大都市には古くから同性愛者のコミュニティが存在しているが、2013年に、未成年者に対する「非伝統的な性的指向の宣伝」を禁止する「同性愛宣伝禁止法」が制定され、LGBTの活動は実質的に違法となっている。

11月2日には、子供たちがLGBTの人々にインタビューし、話を聞く様子を収めた複数の動画がユーチューブに投稿されたことについて、ロシアの警察が捜査を始めたと報じられた。「未成年者が成人とさまざまな性的な事柄について話している」のは「性的暴行」の疑いがあるというのだ。

こうした背景には、ロシアに蔓延するホモフォビア(同性愛嫌悪)の影響を指摘する声もある。

マジョリティである異性愛者が、同性愛者を受け入れられず壁を作ってしまう理由は様々に語られる。その多くは偏見によるものであり、適切な情報を得ることによって解消できるはずだとされる。

しかし、もし家族が同性愛者だった場合、問題はもっとデリケートで複雑なものになるだろう。そこにはどんな壁が存在しているのだろうか。

そんな家族の問題を異性愛者の側から扱っているのが、2005年の邦画『メゾン・ド・ヒミコ』(犬童一心監督)だ。歳をとったゲイたちが集うホームを舞台に、ゲイの父親を持った娘と周囲の人々との関係の変化を描いている。

ゲイだと告白して家を出た父と……

沙織(柴咲コウ)は事務員として働く24歳。後ろで縛っただけの長い髪に眉はボサボサで化粧気がなく、どことなく暗い印象を与える彼女は、がんだった母を亡くし入院費などの借金を抱えている。

沙織が幼少の頃、ゲイだと告白して家を出た父(田中泯)は、新宿のゲイバーの名物ママ「卑弥呼」として名を馳せた後、とある海岸沿いの小さなホテルを買い取って、ゲイのための老人ホームを作ったが、彼もまたがんで病床の身。

亡くなる前に卑弥呼が娘と和解してほしいと願う卑弥呼の恋人、春彦(オダギリジョー)は、沙織にホームでの高額バイトを持ちかける。家族を捨てた父に恨みを抱いている沙織だが、借金返済のためその話に乗るところからドラマは始まる。

徐々に浮かび上がってくる沙織の周囲の人間関係が興味深い。まず沙織の勤める細川塗装。休み時間、若い男性職員が女の話で盛り上がるここは、異性愛者の世界だ。

仕事はできるが、女癖の悪い専務の細川(西島秀俊)は、事務員の若い女を愛人にしている。外見に自信のあるらしい彼女が、あまりぱっとしない新人に愛人の座をあっさり奪われる下りは、実にさりげなく描かれているがありがちなエピソードとして面白い。

一方、毎週末に沙織が通うホームは、年老いたゲイ(一部トランスジェンダー)たちで構成されている。口は悪いが明るい性格のルビイ、女装に憧れ密かにドレスを縫っている山崎、元教員で紳士然とした政木、元ヤクザらしい高尾など個性豊かだ。

それぞれが好きな食べ物を持ち寄るブランチでは、和洋ごちゃ混ぜで、色とりどりの皿がぎっしり並ぶ。そのテーブルは、同じ場に集まっている様々なセクシュアリティのメタファーだ。

文=大野 左紀子

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい