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LGBTからダイバーシティを考える

日本文学研究者、国文学研究資料館長 ロバート キャンベル

自身もトランスジェンダーで、今年15万人を動員した日本最大のLGBTプライドパレードを運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野が、「いま、なぜダイバーシティが必要なのか?」をテーマに、第一線で活躍する人々と実体験を語りあう、対談連載。

第3回のゲストは、日本文学者のロバート キャンベル。「スッキリ」などテレビ番組のコメンテーターとしてもお馴染みのキャンベルだが、18年8月に国会議員の性指向は「趣味のようなもの」という発言に反論する形で、20年近く同性のパートナーがいることを公表した。

文学者として、アメリカ人として、当事者として。彼は日本の現状をどう見ているのか。

「LGBT」という言葉が、LGBTのイメージを変えた

杉山:「ダイバーシティ」という言葉を聞いてもまだあまりピンとこない方たちに、改めて考えてもらうきっかけをつくることができればと思っています。

ロバートさんは日本の文学を研究されていますが、ダイバーシティに対する認識も、まさに言葉によって大きく変わると思うんです。例えば、「性同一『障害』」や「性的『マイノリティ』」などの言葉からも、差別的なニュアンスを読み取れてしまう。

キャンベル:その通りです。最近、メディアで「『嗜好』と『指向』を使い分ける必要はない、そんなのは言葉遊びだ」と言った人がいましたが、それは間違いです。

杉山:このあたりの機微は、とても重要ですよね。近年、LGBTに対する活動が進んだのも、まさに「LGBT」という言葉のおかげでもあると思います。

「セクシュアル・マイノリティ」という言葉では、性行為に限定したイメージ、また「少数派」=マイナス的なイメージが刷り込まれてしまう。それに対して、「LGBT」にはネガティブな要素がありません。

言葉の問題は非常に難しいですよね。よく履歴書の「男・女」欄だけでは不十分だと批判されますが、だったら何を足せばいいのか。「セクシュアル・マイノリティ」では明らかにダメですよね。

キャンベル:私は、言葉は「工具」だと思っています。概念や事実といった「素材」が出揃ったときに、これからの行く末を左右するのが、それらを活用する工具としての言葉なんです。

海外では10数年前から使われていた「LGBT」という言葉が、日本ではこの2~3年で急に市民権を得ています。それだけの変化が起きる際には、必ず課題もついて回る。

「LGBT」という言葉を褒めるだけでなく、日本がどこに向かって変わっていくのかを見定めて、そこからマイノリティの方々も幸せに生きる道を探さなければなりません。

杉山:難しいですね。

キャンベル:大事なのは、英語でいう「tweak(微調整)」ではないでしょうか。いきなり大幅な改革でなくても、少し調整するだけで様々なことが可能になり、その先の階段も上りやすくなる。いまの日本ではそれが少しずつ進行しています。

杉山:渋谷の同性パートナーシップ証明書の発行は、「tweak」の良い例ですね。いま同性婚の可否は大きな変化のように語られていますが、見方を変えればそもそも全ての人に認められているはずの「婚姻の平等」をきちんと適用しようというだけ。

「LGBT」という特別な人たちのためだけの新しい権利ではなく、「すべての国民は法のもとみな平等」と言いながら抜け落ちていた点を修正するだけです。

特に大きなことを始めるという意識をもたなくても実現できることですが、大改革だと捉えている人が多い。とはいえ、渋谷区の同性パートナーシップが、これまでの地ならしのおかげで実現したことはたしかですよね。

文=野口直希 写真=小田駿一

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