キャリア・教育

2018.10.12 16:49

LGBTの働き方改革、選ばれた10企業・団体の顔ぶれは? 勝間和代「偽装しなくていい社会を」

「PRIDE指標」表彰式に出席した経済評論家の勝間和代

「PRIDE指標」表彰式に出席した経済評論家の勝間和代

企業のLGBTに関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」の表彰式が10月11日、東京都内で行われた。

「PRIDE指標」は、LGBT当事者に働きやすい職場環境を議論し、先進的な取り組みをしている企業を紹介する任意団体「work with Pride」(wwP)が毎年制定している。「PRIDE指標2018」は、「Policy(行動宣言)」、 「Representation(当事者コミュニティ)」、「Inspiration (啓発活動)」、「Development(人事制度・プログラム)」、 「Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)」の5つの指標で評価項目を設定し、認定するもの。各指標ごとに特筆される取り組みをした企業を「ベストプラクティス」として選定した。

■勝間和代さん「マジョリティの偽装をしなくてもいい職場を、皆様と一緒に作り上げていきたい」

表彰式では、ゲイであることを公表した国文学研究資料館長のロバート・キャンベルさんや、同性との交際を公表した経済評論家の勝間和代さんもメッセージを寄せた。

「セクシュアル・マイノリティとは、一言では言えないそれぞれの個性と特徴があります。人材としてどういう力があるかは、一人ひとりに違いがありますが、セクシュアル・マイノリティであるがゆえのアドバンテージがあります。そして、小さい頃から直面してきた社会、世間、家族、学校の教室などからくる厳しい抑圧に耐え、順応しながら育っている人たちだと、自分の経験も含めて言えるかと思います。

一括りでは言えませんが、例えば、周りの変化に対して機敏に対応する、人々の空気を読む、あるいはコミュニケーション能力の高さといったものが、LGBTの人たちに共通する力かもしれません。

企業からすれば、課題もあるかもしれませんが、LGBT当事者にはさまざまな魅力があり、彼らが働きやすい職場を作ることは、有望な人材の流出を防ぐ効果もあるでしょう。そして、当事者以外の人たちも安心感を持って快く働ける環境を作ることなど、企業にとって直接プラスになるようなさまざまな側面があると思います。

人材を豊かに育てていくこと、企業・自治体の組織内で、一人ひとりのポテンシャルが100%発揮できるような職場、世間、社会の空間を作れば、これからの課題満載の日本経済や社会にとって大きな貢献となり、一つの大きな花が咲く場所が生まれるのではないかと思います」(ロバート・キャンベルさん)



「友人や職場関係でカミングアウトをしていいという環境が整い、LGBTに対する様々な配慮がされるとわかっていれば、もっと多くの人が勇気を持って発言することができるようになります。これはLGBTという文脈だけではなく、あらゆるマイノリティに対する配慮につながります。誰しもが自身のマイノリティ性を開示できて、最大のパフォーマンスを発揮できる職場を構築すれば、その企業は本当に強くなると思います。

私はもともと女性差別に対する研究や職場での対応をしてきたのですが、女性を活用できた企業は、全世界的に見ても業績がいいし、さまざまな多様性にも対応できています。女性を最大のマイノリティのひとつという扱いをした場合、女性問題は完全とは言えませんが、多くの点で進展が見られます。

したがって、これからはさまざまなマイノリティが活躍できる職場を、今日いらっしゃる皆様がリーダーとなっていただくことで、企業や日本という国がより住みやすくなるのではないかと思います。

自分がマジョリティではないということを公開した瞬間に、職場や社会で攻撃されてしまうと、誰も公開しなくなります。したがって、自分の身の回りのマイノリティが見えなくなって、マジョリティの偽装をするという悪循環が生まれます。だから、マジョリティの偽装をしなくてもいい社会、偽装しなくてもいい職場を皆様と一緒に作り上げていきたいと思います」(勝間和代さん)



■松中権さん「企業の取り組みは、LGBT当事者の人生に大きく関わる」

wwPは表彰式で、LGBTに関する企業などの取り組みの評価指標「PRIDE指標」の2018年版を発表した。2018年度、ベストプラクティスとして選ばれた企業10社は以下の通り。

▼行動宣言

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
物品・サービスの調達やライセンス契約に適用される「東京2020持続可能性に配慮した調達コード」に社会的少数者(マイノリティ)の権利尊重を掲げ、その中に「性的少数者(LGBT等)」を明記。サプライヤーに対しても「平等な経済的・社会的権利を享受できるような支援に配慮すべきである」と求めた。

富士通
日本企業として初めて「国連LGBTIに関する企業行動基準」への支持を公式に表明。

▼当事者コミュニティ

日本たばこ産業
従業員向けセミナーやEラーニングがLGBT ALLYを増やす取り組みとしてどのような効果があるかの調査研究を実施。さらに結果報告会の開催や、インターネットでの報告レポートを公開。

日本トランスオーシャン航空
沖縄地区でLGBT ALLY支援企業を募り、新聞社や情報通信会社など4社合同勉強会等を開催。4社合同LGBTセミナーでは参加者に「LGBT+ALLY」ステッカーを配布するなど、沖縄県内におけるLGBTに対する理解・意識啓蒙を推進。

▼啓発活動

日本アイ・ビー・エム
2018年6月から、LGBT+の理解増進活動、啓蒙活動を活発に行っている社員に対して授与される「LGBT+ Ally Championship Practitioner」バッジ制度を制定。

ラッシュジャパン
全国の店頭、Web、ソーシャルメディアにおいて、LGBTの権利に関する情報やキャンペーンの周知、応援、参加を実施。

▼人事制度・プログラム

アクセンチュア
人事制度の問い合わせに、AIを使用した自動問い合わせツール(チャットボット)を導入。 性的マイノリティに関する制度にも対応し、LGBT当事者が人事に問い合わせることによりカミングアウトせざるを得なくなる、といった状況を回避できるように配慮した。

ストライプインターナショナル
「大切な人休暇」という、法定婚・事実婚・同性パートナー問わず使える独自の休暇制度を立ち上げることで、同性パートナーや事実婚の相手と過ごすライフスタイルを応援。また、「キッズ休暇」は、戸籍上の婚姻関係に関わらず、同性同士のカップルが子供を育てる場合にも適用。

▼社会貢献・渉外活動

日の丸交通
同社代表取締役が東京タクシー協会正副会長会議にて、同社のLGBT採用の現状と問題点を報告、業界全体として雇用の促進を図るべきと提案したことがきっかけとなり、協会内理事会での勉強会実施の検討が始まる。

楽天
同社グループの複数のサービス(結婚式場紹介、クレジットカード、生命保険など)において、LGBT向けの包括的な取り組みを実施。各種メディアを通じて国内外に発信。



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PRIDE指標運営運営委員会事務局の松中権さん(認定特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ代表)は、今年のwwPについて次のように総括した。

「今、LGBTに関する取り組みをされている企業の皆さんがやられていることは、職場にいるLGBT当事者の方の人生に大きく関わります。東京都は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、セクシュアルマイノリティへの差別禁止を盛り込んだ人権尊重条例案を可決成立させました。2020年に向けて、PRIDE指標も前向きにバージョンアップしていきますので、企業の皆さんにもぜひご協力をお願いします」

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