アフリカで最初に成功する日本人起業家は?
「テクノロジーありきでうまくいくケースは少ない」と話すのは昨年、Connect Afyaを創業した嶋田庸一だ。東大卒で前職は戦略コンサルティングファームの嶋田は、複数の独立系VCから約3000万円の出資を受け、3カ月前に事業を開始。データを使った新しいヘルスケアサービスの展開を視野に入れつつ、現地の臨床検査技師ら6人のスタッフで臨床検査センターを運営し、ナイロビの病院やクリニックなど10施設に検査サービスを提供する。
順調な滑り出しのように見えるが、嶋田は「アフリカはまだ所得レベルが低く、投下される資本も小さいため、マス向けの単一事業で急成長できるスタートアップは難しい」と慎重だ。「数年後には複数の事業展開をして、黒字化を目指したい」と話す。
ケニアの食卓には欠かせない赤玉ねぎの卸売サービス「YasaFi」を17年に開始したAmoebaXの河野邦彦も、まずは地に足がついたビジネスモデルを重要視する。VCのREAPRAから出資を受け、ケニアの農家と3500ほどの街中の小売業者をつなぎ、1日10トン近くを売り上げる。
河野はケニアに来る前にアジアで学校立ち上げやスタートアップ勤務を経験した叩き上げだ。事前調査と検証を重ね、起業したのは17年。
「新しいことをやるというより、やるべきことをやってきた。アフリカは市場規模が小さいので急成長はできなくても、10年間やれれば次のグローバルカンパニーをつくれる。ゆくゆくはデータを使った金融サービスなど高収益なビジネスモデルをつくる。アフリカで起業した日本人で、成功した人はまだいない。ならば自分がなりたい」と野望を掲げる。
変わり種のビジネスを始めた若者たちもいる。18年にウガンダの首都カンパラでオープンした「YAMASEN」は創作和食料理を中高所得者向けの価格帯で提供するレストラン。現地の農作物の生産や日本への輸出、ウガンダで活動する企業が入る商業施設も運営している。うどん屋チェーンのトリドールや、消毒剤や洗剤メーカーのサラヤなどから100万ドル近くの出資を受けている。
運営するのは、日本の農業スタートアップ「坂ノ途中」の元社員、宮下芙美子とその料理人の夫、日本人の仲間で立ち上げたCOTS COTSLIMITED。ウガンダは外食産業の基盤が未発達で、食材や人材の確保や、客足の伸び悩みなど課題も多い。しかし、「未発達だからこそ、業界のスタンダートをつくりたい」と宮下は抱負を語る。
現地のスタートアップのレベルも高まっており、コネクションがない日本人が言語や文化の壁を超えて起業して成功するのは簡単ではない。