アフリカ大陸のスタートアップへの注目が高まっている。2018年にベンチャーキャピタル(VC)から集めた大陸全体の投資総額は、スタートアップメディアのウィートラッカーによると7億2560万ドル(日本円で約770億円)で前年比の3.5倍。日本と比べて半分以下だが、その成長速度は圧倒的だ。
なかでも大陸全体の30%の投資を集めるケニアは、高学歴の欧米出身者が起業するスタートアップが目立つ。実は、日本からもケニアを中心としたアフリカ諸国に移り住み、起業する20代から30代の若者がいる。彼らの多くは、国内外の一流大学を卒業し、有名企業で勤務した「エリート」たちだ。「日本人のプレゼンスはほぼゼロ」と関係者が口を揃えるアフリカのスタートアップ業界。彼らはなぜそこに挑戦するのか。最後のフロンティア、アフリカでビジネスをする魅力と現実を聞いた。
未成熟市場だから本流に挑める
「魅力に感じるのは、まだ市場が成熟していないからこそ、低コストで本流のサービスに挑戦できるところ」。そう話すのは、ケニアの首都ナイロビを拠点にするアフリカインキュベーターの永井健太郎だ。同社は食品や消費財などの製造や流通業者向けの営業管理システム「SENRI」を提供する。
永井は、新卒で入職した国際協力機構(JICA)で、アフリカの開発案件に携わり、「援助や課題解決だけでは、大きなインパクトを与えられるソリューションがなかなかできない」と感じ、課題解決とスケーラビリティを両立できるビジネスを志すようになった。
同社はマネックスベンチャーズ、ANRI、森永製菓などから総額1億円以上を調達。永井は東大卒でシカゴ大学MBA保持者という高学歴で、外資コンサルを辞めて15年に創業した。
「ここでは、経済の動脈となる消費財が手元に届くまでの『本流の部分』を攻めることができる。大きく成長する市場で、国の経済の枠組みを変えられるかもしれません」。現在、同社は100社ほどの顧客を抱えるが、「SENRI はスタートポイントに過ぎない」と話す。「我々の顧客がもつ10万社のネットワークを活用できれば、決済サービスなど新しいサービスができるはず」と期待を込める。