ケニアを拠点に、アフリカ各地の情報を日本語で伝えるオンラインメディア「アフリカクエスト」編集長を務める横山裕司は、「(8月末に横浜で開催される)アフリカ開発会議(TICAD)の影響もあって、関心は高まっていると感じる。アフリカの起業に関心がある若者も増えている」と話す。その理由として、永井のように「20代や30代の若い世代でもトップで勝負できるのが魅力ではないか」と分析する。
19年8月に関西電力との大型提携を発表したWASSHA。共同創業者兼CEOの秋田智司は従業員の成長にやりがいを感じているという。「大学を出て無職の人や失職した人を雇って育ててきた。未来に失望していた彼らが、いま自分ごとのように会社の未来を語ってくれているのがうれしい。人々の人生を変えていると実感するし、責任も感じる」。
WASSHAは、タンザニアを中心に送電網が整っていない未電化地域の低所得者層向けに太陽光発電を使った電力を提供。東京大学エッジキャピタルやJICA、丸紅などから14億円程度を調達。アフリカ拠点の日本発スタートアップとして最大規模だ。
未電化地域向け電力事業は、欧米系大手スタートアップも参入し、各社の資金競争が激化しているが、「他社の多くは中所得者層が対象。現地でニーズが高いのは低所得者層で、潜在顧客は350万世帯ほどあるはず。低所得者層向けのビジネスでも、仕組みを工夫すれば収益性も追求できるし、売り上げは伸び続けている。現地メンバーは120人に増え、タンザニアではそれなりに規模が大きい会社になった」と秋田は胸を張る。
なぜアフリカが熱いのか
アフリカのスタートアップ熱を理解するのに欠かせないのは、「人口とテクノロジー」のユニークさだ。アフリカ大陸の全54カ国の人口約12億人は、国連の推計によると、50年には約25億人に増え、世界の人口の4人に1人を占める。人口構成は若年層が6割。少子高齢化が進む日本と対照的だ。
テクノロジーの観点では、モバイル通信の普及とともに、ケニアの「エムペサ」などモバイル送金サービスが拡大し、遠隔地の金融アクセスが向上。一部地域では、キャッシュレス化が日本より進み、携帯を使ったライドシェアなど交通・輸送インフラも効率化している。こうしたビジネス環境の向上もあり、「これまでアフリカで起業する人というと開発援助的な意味合いが強かったが、最近では高学歴者やコンサル出身者、起業経験者などハイレベルの人材がビジネスの成功を戦略的に考えて入ってきているのが特徴だ」と前出の横山は指摘する。
では、テクノロジーを使って急成長するスタートアップをアフリカで日本人がつくれるのか。