ストーリーを想像してしまう元○○
プロジェクトのために実施したクラウドファンディングの説明に彼らはこう記した。
「あなたが今いるその場所は、元々は何があった場所なのだろう。(中略)元は____だったという、それだけで人は、なぜか想像するものである。そこに流れていた時間や、そこで起きたであろう過去、誰かの偶像。今その場に立っている自分と、膨大な時間との繋がり。次々と建設されていくビル、再開発される街。その中で、極所的に時間の流れが止まっているかの様にも感じる寂びた建物。それらが混在する今の日本において、新しい可能性を感じたのだ」
改装中の元映画館
「元映画館」という名前と内装から、この場所を訪れるものはその場所の過去を勝手に想像してしまう。無機質な再開発とは対照的な、感情のこもった空間提案だ。そもそも、企画に関わる全員が20〜30代で、この場所のかつての賑わいを誰も知らない。写真や資料もほとんどなく、「元映画館」の実態は誰にもわからないままだ。
具体的な用途としてはギャラリーやバー、イベントスペースなど、あらゆる可能性を残しているが、それらはあくまで一つの用途でしかない。あらゆる用途を想定し、ターゲットも明確には定めていない。「目的を持ってからこの場所を使うのではなく、この場所を訪れた人が『元映画館』だからこそやってみたいと思った使い方を自由にしてほしい。具体的なターゲットなど何も決めずとも、あらゆる人の集まり、交流を生むことができれば、建築として空間作りに新しい可能性を見出せたと言えるはずです」と半田。
効率的ではない収益モデルにこそ未来がある
28年ぶりに日の目を浴びることになった「元映画館」だが、建物自体の耐久年数の問題から、この場所を使えるのは長くて向こう10年だという。半田と高橋は今後、同じようにかつてなんらかの用途で使われていた場所を活用した「元____ 」を事業として拡大していく計画だ。