一方で、総務省の「住宅・土地統計調査」(平成30年)によると、住居の空き家率は増加を続け、昨年13.6%と過去最高を記録。住居だけでなく、長らく活用されていないビルや物件、廃工場などの遊休不動産の扱い方が全国的に課題となっている。
そんな時代に、立地や用途などその土地のデメリットをコンセプトに取り入れることで、新たな空間提案に挑戦する若者がいる。
4カ月という「束の間」
10月12日に渋谷区・神泉にオープンしたばかりの「ツカノマノフードコート」。その名の通り、期間限定“束の間”のフードコートだが、実はこのビル自体が来春解体を待つだけの遊休不動産だった。営業期間は10月から解体されるまでのたった4カ月。一般企業なら利用しないであろう期間限定の物件に目をつけ、その“刹那性”を企画にすることで実現した飲食店だ。
企画したのは1992〜93年生まれの若者たち。空間ディレクションを専門とするANCRのCCO溝端友輔、広告会社でサービスデザインなどを手がけるプロデューサーの古谷知華、スマイルズでクリエイティブディレクターを務める木本梨絵、そしてファッションスタートアップのsitateruでPRやブランディングなどを担当する若尾真実。
左から、若尾真実、木本梨絵、古谷知華、溝端友輔
業種も得意分野も異なる4人が集まり、クラウドファンディング「Makuake」で資金調達を実施、企画の実現に至った。
まず、溝端がANCRを通じて解体前の物件運営を丸々引き受けた。そのままでは価値を生まない物件だけに、テナントに格安で貸し出せるだけでなく、持ち込まれた企画が面白ければ、賃料の交渉も可能。しかも、解体が前提の物件であるため、現状復帰の必要もなく、自由に活用できるというメリットもある。
溝端はこのように、遊休不動産と挑戦したい者をマッチングさせる不動産事業「RELABEL(リ・ラベル)」を立ち上げ、リードしている。「都市部の家賃は高いので、本当にチャレンジしたいことを諦めたり、そのぶんのコストを商品に反映したり、やりたいことをハードに合わせていくしかありません。僕たちの判断基準はお金になるかどうかではなく、本当にいいものを社会に提案できるかどうか」と溝端。「ツカノマノフードコート」はRELABEL事業の本格始動に向けたプロジェクトの一つだった。