ただし、収益化は簡単ではない。明確なターゲットを定めていない「元映画館」では収支目標が立てづらく、前述のRELABEL事業は賃料収入の割合が少ない。
半田は自身のビジネスモデルについて、こう話す。
「普通にリノベーションをした物件よりも文脈を引き継ぐというルールによって、ここを使う人が創造的になれる。この事業は単なる土地活用の方法論ではなく、アートの地平を広げる活動とも言えます。だから、この場所では顧客のロイヤルティが高くなり得るのと同時に、来る人が既存空間へのリスペクトを感じられる。実は、これは愛される店舗と同じ構造だと思うんです。文脈のない店舗を構えるよりも比較的安心のできるビジネスモデルなのかもしれません」
プレオープン時のツカノマフードコートには大勢が駆けつけた
ツカノマフードコートの溝端も「刹那性のある土地活用から、短期的に大きな収益を上げることは求めていない」と語る。「RELABELとして不動産運用を行い、そこで集まった独自データを活用することで商業施設などのテナントリーシング行うなど、キャッシュポイントをずらすように考えています。そうすることで、短期間で、長期的なまちづくりにもつながるはずです」
単なる箱としてのテナント活用とは異なり、そこに刹那性や感情を想起するコンセプトや仕掛けを取り込むことで、利用者(テナント)も来場者も自分ゴト化することができ、愛着を感じやすくなる。しかも、ここで得られた知見を大きな規模へ広げていける可能性もある。
淡々と進む大規模な再開発の外側で増えるこうした小さなプロジェクトには、サステナブルに街と共生する店舗のヒントが隠れているのかもしれない。