アンドレアスは創業間もないアマゾンに参画し、データサイエンスの知見を使って同社のデータ戦略の中心を担っていた人物。アマゾンを辞めた後も、「データと分析技術の活用方法を教えてほしい」と世界中の企業から引っ張りだこでである。
そうした中、アンドレアスがZOZOテクノロジーズのデータサイエンスアドバイザーになろうと思った理由は何か。話を聞いて意外だったのだが、彼もZOZOテクノロジーズに対して「気が合う」と感じていたのだ。
「これまでにも、いくつかのスタートアップに関わってきましたが、どのスタートアップが成功するかは全くわかりません。コントロールできない外的要因がたくさんありますからね。だからこそ、私は“人”を重視します。嫌いな人と働く時間があるほど、人生は長くないと思っているので、私は好きな人たちと働きたい。その点、ZOZOテクノロジーズには楽しそうな人たちがたくさんいるので、一緒に働きたいと思いました」(アンドレアス)
今のZOZOには、過去のアマゾンに通ずるものがある
2018年4月に「ZOZO研究所」を発足。さまざまな専門分野の人材を採用し、テクノロジーの活用に力を注いでいるZOZOテクノロジーズ。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」に蓄積されている画像データや購買ログなどの膨大なデータを活用し、ユーザー体験の向上に取り組むことは喫緊の重要なトピックのひとつである。
金山はこれまでアンドレアスが培ってきたデータサイエンスの知見をZOZOグループにインストールし、テクノロジーの活用をさらに推進していこうと考えている。
「数々の実験をアマゾンで行い、成功に導いてきたように、アンドレアスには経験に裏打ちされたデータサイエンスの考え方があります。彼のビジョンや視点に、オリジナルなものがあると感じました。
例えば、最初のミーティングの時に、データに対する彼の考え方が分かる話しをしてくれました。通常、コールセンターに電話がかかってくるのは良いことではないので、多くの企業は“減らす”という発想になります。一方で、コールセンターに電話した結果、そのユーザーが優良顧客になり、より長いスパンでその会社に売上利益を落としてくれるような存在になっているというデータがあったとしたら、コールセンターをどうするのか。そういう色んな側面でデータを見て意思決定をすべきだ、と彼は言うのです。
確かにコールセンターにかかってくる時点で不満を持っているが、それを減らそうという意思決定をするのか、その後にある付加価値を見ようとするのか。答えは『データを見て多面的に判断しなくてはいけない』というエピソードを話ていました。その発想がすぐに出てくるという瞬発力は、修羅場をくぐってきたからこそ持っているものだと感じましたし、ZOZOグループにもインストールしたい考え方でした」
こうしたZOZOグループの考え方、そしてデータサイエンスに対する姿勢についてアンドレアスは「過去のアマゾンに似ている」と言い、ZOZOグループの可能性をこう語る。
「ジェフはデータサイエンスに夢中で、実験が大好きでした。そして実験こそがイノベーションを推進してくれるものだ、と信じていたのです。だからこそ、今のアマゾンがあります。この考え方は現在のZOZOグループにも通ずるものがあり、データサイエンスがイノベーションに繋がることをわかり始めている。今後、データをもとに仮説を立てて検証する。そして、そこに人間ならではの創造性、発想力を掛け合わせることができれば、ZOZOグループはアマゾンのような会社になれると思っています」