フィンランドの課題
育休において、思い当たる課題を聞いたところ、「取得期間の男女差」だと語った。3週間の育休をとる男性は一般的になったが、5カ月間の休暇を取得する男性はまだまだ少ないという。男女の年収を比べて、男性のほうが稼げるからという理由で、女性の育休が長く取られているケースが多いという。そして、それはさらなる男女格差を生む原因ともなっている。
ユハナは「男女の機会平等を向上するためや賃金格差をなくすためにも、男性の5カ月間の育休取得を義務付けるべきではないか」と主張する。日本でも男性の方が稼いでいるという理由で、父親の育休取得を諦めている家庭も多いのではないか。経済状況が厳しいなか、1人でも多くの男性がとりやすくなるためには、ある程度の「義務化」は必要なのかもしれない。
2人の子どもを育てるユハナ・トゥーナネン
30年前の勇気
フィンランドで男性の育児休暇取得が一般的になったのは、それほど昔のことではない。そこにはパイオニアとして取得してきた数々の男性たちの歴史がある。約30年前に、自らの判断で5カ月間の育休を取得したフィンランド男性に話を聞くことができた。
フィンランド航空のアジア・オセアニアエリアの副社長を務めるレフティオクサ・ヨンネは約30年前に第1子が生まれた際、「勇気を振り絞って」5カ月間の育休を取得したという。当時、男性の育休取得はとても珍しいことで、同僚たちからも驚かれたという。
なぜそうしたのか聞くと、「妻のキャリアをサポートしたかったからだ」と嬉しそうに答えた。実際、彼が育児を肩代わりすることで、彼のパートナーは仕事に戻り、昇進することもできたという。そして、彼自身もその後に転職し、現在のマネージメントポストに就いている。
フィンランド航空で働くレフティオクサ・ヨンネ
30年前の彼の勇気ある行動が先駆となって、フィンランドの男性の育児休暇取得をより一般的なものにしたと言っても過言ではないかもしれない。「ローマは一日にして成らず」、男性の育児休暇取得も、1人1人の男性の意識改革とそれを支える周囲の暖かい視線で、より良いものへと確立していくのだろう。そう思わせてくれるとても印象深いエピソードだった。