ビジネス

2019.10.02 17:00

異能のアンドロイド研究者「ミスター・ロボット」が定義する『心』とは

石黒浩教授 by Gettyimages


━━自分の姿をコピーするというアイデアはどうやって思いついたのですか? また、なぜ自分の姿にこだわるのですか?

私は最初にコンピューターサイエンスを学び、続いて人工知能とロボティクスを学びました。そしてその後ヒューマノイドロボットを学び、自分のコピーに取り組み始めましたが、私にとっては流れの中で、自然なことでしたね。
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私たちは常に技術の改善を続けています。現在最も先進的な技術は、「ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)」です。これにより、人間が思考することでアンドロイドを制御できるようになり、人間の脳をアンドロイドのボディに連動することができます。下半身不随の患者が、「考える」だけでアンドロイドを動かせるのです。まだごく限られた範囲でしか使えませんが。

━━あなたの研究のモチベーションは何ですか?

自分や、人間のことを理解したい、ということに尽きます。好奇心の源は、いつでも自分と周囲の人々です。実はロボット自体は、私にとってそれほど重要ではありません。


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━━BBCによると、2018年4月に、あなたが制作したアンドロイドである「エリカ」が日本のニュース放送のキャスターを務めることになっていますね?

ええ、その通りです。実はまだ部外秘なのですが、記者が聞き上手だったので、私は秘密情報をもらしてしまったようです。ちなみに、アンドロイドが務めるのはニュースキャスターの役割はなく、司会者のサポートです。

━━では、エリカは何をするのですか?

それはまだ言えません。ただし、エリカのYouTubeチャンネルがありますので、そこで多くの動画を視聴できるはずです。 



━━他の記事によると、あなたは「エリカに心がある」とおっしゃった。これは正しいですか?

いいえ。エリカに心があるかどうかを決めるのは、各自の判断です。あなたがそう感じるなら、彼女には心があるのでしょう。心とは、客観的ではなく主観的なものだと思います。でも、もちろん、人間もロボットも、感情を発達させるためのメカニズムを必要とします。(ノートパソコンを指さして、)このコンピューターからは、心を感じないかもしれません。しかし人間はとても複雑な生き物であり、心の感覚を欲しがるのです。

━━約20年間のロボット工学とAIの研究のなかで、人間についてどんな発見がありましたか?

私からも質問させてください。あなたの仕事のモチベーションは? 人への好奇心ではありませんか?

━━確かに、そうとも言えます。

私もモチベーションは同じです。

━━ロボットは、あなた自身のどんなことを教えてくれましたか?

心理学など、認知科学の分野もまた、人間に関わる学問です。私も人間について、異なる視点から研究しています。ロボットは、人間の精神機能と複雑な社会的行動を理解するための検査対象であり、ツールなのです。

━━あなたの研究は、他の科学者とは異なる発見にたどり着いたのでしょうか? もしくは、まったく新しい領域に到達したのでしょうか?

ええ、新たに発見したことは多いと思います。たとえば、人のコミュニケーションについて。まずは3人の人間がやりとりをしている状況を観察し、それぞれの動作や注意力や集中力を調べます。その後、その状況をロボットに置き換え、操作誘導することで、何が起きるかを調べることができます。
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文=Heidi Aichinger、Elisabeth Woditschka 翻訳=塙貴子 編集=石井節子

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