報告書によると、社会福祉分野では大きな支援が必要とされているものの、ロボットがそのギャップを埋めるための主要な役割を果たすまでの道のりは長いという。報告書は次のように指摘している。
「社会福祉向けのロボットやロボット機器は、その多くがまだコンセプト段階や設計段階にあるようだ。重要な問いとして、新しいロボットやロボット技術が既存の社会福祉環境に組み込み可能であるか、現行技術と共存可能なのか、あるいは現行技術を完全に置き換えるものなのか、という問題がある」
この分野で進行中の最大のプロジェクトの一つが、欧州連合(EU)が支援する「GrowMeUp」だ。同プロジェクトで開発されるロボット「GrowMu」は、複数の先進的アルゴリズムにより、介護の対象者や環境の変化に順応する。これにより対象者の日課を理解し、その日課の改善方法を考案できる。例えば、食生活の改善を提案したり、転倒の危険性を警告したりできる。
「適応学習(アダプティブラーニング)や多目的意思決定のアルゴリズムを組み込んだロボットは、ユーザーの会話や行動のパターンを学習し、アクションが必要な状況を認識できる」と開発チームは解説している。
患者と共に成長
例えば、GrowMuは顔認識や会話を通じ、各個人のスケジュールなどのニーズを記憶して、必要な時間にリマインダーを発することができる。患者と共に「成長」するようプログラムされており、患者の生活の質を維持するため、新しいエクササイズを生活に取り入れたり、社会活動参加の手配をしたりといったライフスタイル改善を提案できる。
GrowMuはクラウドベースのサービスに接続するため、ユーザーは莫大なデータを利用できるほか、介護スタッフのみならず、友人や同僚、他の高齢者らも参加する社会福祉ネットワークへもアクセスできる。これを通じ、患者のニーズに合った1日の予定を組むことができる。
「私たちは確実に、社会ロボットを社会へと近づけた。知的対話により、高齢者は簡単かつ直感的に、自然な発話を通じてシステムとやり取りができる」と開発チームは言う。
しかし最も興味深いのは、こうしたロボットがどのように受け入れられるかという部分だろう。高齢者は新しいテクノロジーを避けるものと思い込みがあるが、実際はそうでもないことが調査から示されている。