再生可能エネルギーの成長が化石燃料の成長を大きく上回るようになるまで、今後20年で解決すべき環境問題への対応が前進することはないだろう。
世界中で、あらゆる化石燃料の使用が増えている。その主な理由は発展途上国の経済成長だ。石炭の使用さえも世界規模で増えていて、水力・原子力・再生可能エネルギーを合わせたよりも多くの電力を生産している。
先進国では石炭から天然ガスへの移行が進んでいるが、発展途上国は石炭を自分たちの“救済者”だと考えている。しかし、これは石炭が最も安いからではない。
石炭を使った発電の長所
既存のインフラがほとんどないような貧しい国や発展途上国で、エネルギー源として導入するのが最も楽なのは石炭だ。石炭は、船や鉄道、トラックなどを使うことができるため輸送が容易で、石炭を燃料とした発電所は建設も運営も簡単だ。
発電所の建設が最も簡単なのは天然ガスだが、その他のエネルギー源と比べてより多くのインフラを必要とする。天然ガスを使った発電所には、ガスの輸送に使うパイプラインや液状化施設、特別基地、貯蔵施設(深い地下層に作られることが多い)などが必要となる。
発展途上国では、再生可能エネルギーを支えるベースロード電力や間欠性を負荷追従するための予備電力源、広範な高圧配電系統がないといった理由で、大規模な再生可能エネルギー発電は効果的ではない。発展途上国での水力発電は可能だが、地形学的な制約がある。
飢えに苦しむ国民を近代化へ導く明らかなエネルギー源は石炭なのだ。こうした国は、発展を遂げた後で地球のことを気にかける余裕を持つかもしれない。これこそが、地球温暖化の緩和を目指すあらゆる計画の大きな障壁となっているようだ。世界で石炭の消費が近いうちに減ることを期待してはいけない。
一方、天然ガスは昨年、世界のエネルギー需要の成長の半分近くを占め、約5%増加した。国際エネルギー機関(IEA)によると、大規模な消費をしていたのは中国と米国だった。
石油の需要は昨年6億バレル近く増加し、米国は史上初めて1日に1200万バレルを超える原油を生産している。また、米国での石炭の需要は下がり続けているが、天然ガスの消費量は記録を取り始めた1970年代以降最高水準に達した。