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2019.08.17

減るどころか増え続ける化石燃料の消費 エネルギーの未来は?

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再生可能エネルギーも急速に成長してはいるが、化石燃料の成長と比べるとまだ小規模だ。中国は2018年、再生可能電気を米国の6倍以上増加させたが、石炭やガスはそれよりもはるかに増加しており、またいっそう多くの石油も生産されたため、温室効果ガス排出量には少しも効果がなかった。

原子力と水力発電は世界規模で変化がなく、今後数十年で適度にしか成長しないと予想されている。

こうした数字は、気候変動を気にかけている人にとっては憂慮すべきものだろう。今年6月が、1880年代に記録を始めてから最も暑い6月であったことを考えるとなおさらだ。

一方で、エネルギーの増加は貧困の減少を示す。発展途上国では、いまだに10億人以上の人が電気を全く使用できない状態にいるし、約20億人はいまだに木や肥やしを燃やして主要なエネルギー源としている。

今後30年で生まれる人の数は30億人だ。こうした人々が生きていくには多くのエネルギーが必要となる。良い生活を送るためには、1年に少なくとも1人3000キロワット時が必要だ。そうなると、全人類を合わせた時に必要なエネルギー量は年間約35兆キロワット時となり、現在世界で生産されている全電力より40%ほど多い。これは、世界の貧困を根絶し、その副産物である戦争とテロリズムをなくすために必要な最低限のエネルギー量だ。

化石燃料に頼らず必要なエネルギーを生むには

私たちは、化石燃料を使っても使わなくてもこれを実現できる。化石燃料を使って実現するにはこれまで通り続ければよい。化石燃料なしで実現するにはいくつか大きな変化が必要だ。その最低要件は次のようなものだ。

・化石燃料を使った発電所の新たな建設を、できる限り早く全てやめること
・350万メガワットの新たな風力タービン
・140万メガワットの新たな原子炉。特に再生可能エネルギーを負荷追従するのに理想的な小型原子炉(SMR)
・210万メガワットの新たな太陽光発電
・120万メガワットの新たな水力発電(既存のもの8万メガワット)
・こうした代替手段(特に石油を代替するのに十分な台数の完全な電気自動車/EVを作るための電池の製造)に必要なリチウム、コバルト、鉄など金属資源の確保
・2050年までに30億台の完全なEVを作ること

こうした新たな低炭素発電方法の組み合わせを採用した場合、今後約30年のコストは約65兆ドル(約6900兆円)で、これまでと同じエネルギー源を使った場合の今後30年のコスト、約63兆ドル(約6700兆円)とほぼ変わらない。総コストのうち燃料費の代わりに前払いの資本コストが高くなるだけだ。

現在の世界的政治状況では、本当の低炭素エネルギー世界を実現するのは不可能かもしれない。それでも、やはり私たちは挑戦すべきだ。

翻訳・編集=出田静

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