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ドクター本荘の「垣根を超える力」

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54歳で初めて父親になった筆者は、出産や育児について、なるべく多くの情報を得ようと努力しました。しかし、ある本に良いと書いてあることを、医者が否定したり、親のアドバイスが真逆だったり……。新生児の育児に関して、「サイエンス不足」を強く感じました。

例えば妊婦の運動について、アメリカでは奨励されていますが、日本の病院では止めておいたほうがいいと言われました。授乳については、左右の片方5分までしか意味はないと教えられることもあれば、片方30分かけなさいとアドバイスされたこともあります。

ウンチやあやし方、ミルクの量他、あらゆることについてさまざまな人や病院から違うことを言われます。そして、不思議なことにそのほとんどが断定的な言い方です。初産で不安な母親はそれだけで戸惑い、ストレスを感じてしまったりもします。

それで、「違うことを言われて困る……」と相談すると、「最後は自分で決めなさい」と言い放たれることもしばしばです。

さらには、間違ったアドバイスまで混ざっています。親や知り合いが言うことには特に、古いものや誤っていること、または、記憶が間違っていることも。昔のことで定かでない割に、自分がやって正かったと思い込んでいる場合はかえって質(たち)が悪い。「悪意なき押しつけ」ほど困るものはありません。



混乱させられる指導、平均に縛られた視点

いったいどうしてこういうことになるのでしょう。これには、まず、次の2つの理由が考えられます。ひとつは、サイエンスの不足。もうひとつが、平均値と個人のギャップです。

前出の妊婦の運動や授乳については、サイエンスが足りないことを示しています。こうした混乱した指導には、そもそも科学的にわかっていないという根本的な話と、科学的な知見を理解して使っているかという実践の話があります。

スマホのアプリ「パパっと育児」を運営しているスタートアップ企業ファーストアセントを創業した友人は、ユーザーからのデータをもとに成育医療研究センターと共同研究などをしています。

すると、データを示して初めて、「あっ、そうなんですか」と言う専門家が予想以上に多かったと言います。つまり、サイエンスに基づいていたわけではなく、経験とか勘でなんとか実践してきたことが多々あるということです。

文=本荘修二 写真=Getty Images

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