妻の出産を機に、経営の視点で「母乳信仰」を考えてみた

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昨年夏、筆者は、54歳でパパになりました。産後の育児はチャレンジの連続。新たな発見や学びも多ければ、経営学者として疑問を持ったことも数知れずあります。

そこで今回、「垣根を越える力」と題したこのコラムで、いち男性から父親となって100日の育児体験を振り返りながら、知り得た情報や考えたことを書いてみたい。そこには、危機を迎えている日本の「産後問題」についての解決のヒントが含まれているようにも思います。

我が子が「可愛い」より「怖い」

妻の出産は夜でした。吸引分娩での出産で、かなりの出血があり、その晩は病院に赤ちゃんを預かってもらいました。出産翌日、妻は、貧血で気を失うなどフラフラの状態だったのですが、病院は母乳と母子同室を推奨し、悪戦苦闘で授乳に取り組みました。

でも、母乳は簡単に出るわけではありません。痛みや不安も伴い、とくに初めは苦労する母親も多数いるようです。しかも、生まれたての赤ちゃんは、うまく母乳を飲めない。乳首が切れて血がにじんでも、赤ちゃんに懸命に飲ませる……これを2時間半から3時間ごとに繰り返さなければなりません。

生後すぐの赤ちゃんは、目も見えないし、ただ泣くだけで、出産直後で体が弱り、精神的にも余裕がない母親はオロオロするばかり。「可愛い」はずの赤ちゃんが泣くたびにドキッとしたりして、そういう自分を責めたりしてしまいます。



産後はホルモンが不安定なので、情緒も不安定。そのうえ、周りにいるほかの母親が大変そうなのを見て、さらに不安に。筆者の妻が出産した病院(母乳推奨)では、母乳がなかなか出ない方が、「母乳でなければダメなんですよね……」と悲痛な顔で泣きそうになりながら看護婦さんに話しかけていました。

かくして、新米ママは不安でいっぱいになります。赤ちゃんが産まれたというと、「可愛いでしょう」という声をたくさん聞くのですが、「可愛い」というより「怖い」という感情が先に立つ人も多い。筆者も可愛いと思えるようになるまで2カ月以上かかりました。
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文=本荘修二 写真=shutterstock.com

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