スウェーデンではなぜ、これほど多くの父親が育休を取得できるのか。筆者が実際にスウェーデンで4カ月の育休を取得した経験を紹介しよう。
父親が90日取得しないと損になる
この国では子どもが生まれると、父親と母親で合わせて480日分の育児休暇が与えられる。また、どちらかの親が最低90日取らないと、その分は消滅していってしまうというルールが存在するので、父親が最低でも90日の育休を取ることにつながってくる。
例えば、多くの夫婦は、母親が最初の10カ月、その後に父親が3カ月ほどの育休を取得している(下図参照)。
育児休暇手当は社会保険庁より支払われるが、給付金の割合と休暇日数の減り方には関係性があり、例えば1日当たりの給付金を満額受け取る場合だと休暇は1日分減り、手当てを半額にすると半日だけ減る。つまり、太く短く使うのか、細く長く使うのかを個人で選択できるようになっている。
この権利は、移民であるわれわれ一家にもスウェーデン人と同様に与えられており、わが家の場合は、次女が誕生した2017年6月からの1年を母親が育休を取得し、父親である私が7月から10月までの4カ月を引き継いだ。内訳は1カ月が有給休暇で3カ月が育児休暇となり、上記制度の通り、普段とほぼ変わらない収入が得られ、経済的に困ることはまったくなかった。
育児休暇が明けたら「出世」していた
私が、現在のスウェーデン企業で働いてから、約2年半が経過するが、この間に育休を取得した男性の同僚は数え切れないほどいた。やはり、30代の社員が圧倒的に多いが、40代の部長クラスも2人いた。そのうちの1人は私を雇った人間だが、彼は1年ほど出社せず、彼からはメールも1通も来なかった。
会社から見れば、平社員が数カ月抜けるのと、数10人の部下を抱える部長が1年間も不在にするのとでは、当然のことながら、対応の仕方が変わってくる。1年間不在となった部長の穴埋めの仕方は次のようなものだった。
まずは彼が抱えていた仕事を3つに分割し、それぞれを担当する課長級のポジションが新設された。引き継ぎ期間はあったものの、人が変わればやり方が変わるのは当然で、当初は多少の改善点が見受けられたが、他部署から苦情が出るようなことはなかった。彼が1年後に復帰した後、彼の得意分野を活かす部署が新設され、また部長としての職務を果たしている。