キャリア・教育

2019.07.24 12:00

退路を断ち、小出監督にすがった若き頃の選択|高橋尚子 #30UNDER30

スポーツキャスター 高橋尚子


当時、小出監督のリクルートは日本一のチームで、有森裕子さんをはじめとするすばらしいメンバーがそろっていました。大学の監督のはからいで小出監督にお会いできることになったときに、お声がけいただいていた実業団は事前にすべてお断りしました。なぜなら、他のところに行けると思うと甘えになる、断崖絶壁に自分を置かないと自分の意志を貫けないと思ったんです。でも、お会いした小出監督の第一声が「うちは、大学生は取らないから」で……。
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就職浪人も一瞬頭をよぎりましたが諦めず「合宿に実費でいいから参加させてください」と懇願しました。結局それが叶って、10日間の合宿に参加したんです。小出監督はその間に何か感じるものがあったのか、最終日に部屋に呼ばれたんです。そこで「契約社員でよければ来るかい」と言ってもらって。もがいたことで新しい道が拓けた、諦める前にやり尽くしてみてよかった、そんなことを思いました。

努力目標ではなく、必達目標を設定「できなかったら道は諦める」

とはいえ、最初から日本や世界のトップを目指していたわけではありません。もともとの自分の力を把握して、無理な目標は立てなかった。目標は手に届く範囲のものにして、「1年後はこう」「3カ月後はこう」とタイムや順位、体重などを逆算しながら達成していきました。
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つまり、これは「できたらいいな」という努力目標ではなく、「しなければいけない」という必達目標です。

手の届く範囲の目標を達成できないのであれば、その先の目標は諦める。そう自分にプレッシャーをかけて立てた目標は、ほとんど達成してきました。「家の掃除をしよう」とかはできないんですけどね(笑)。でも、陸上は自分の軸になっているもので、思いもそれだけ大きかった。だからこそ、予想できなかったところまで、少しずつだけど進んで、たどり着けたのだと思います。

もうひとつ、目標達成のためにずっと続けたことがあります。それは「プラス3本走る」こと。中学時代に日本代表選手の方の話を聞く機会があり、その方が「練習後に100mをプラス3本走ったら日の丸をつけられる」とおっしゃっていたんです。

半信半疑だったのですが、周囲と同じことだけ、いつもと同じことだけをやっていたら、永遠にライバルや理想との差が埋まらない。だから練習が終わったら自主練を、10分から始め、多いと2時間くらいやっていた。現役時代のマイルールでした。
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文=朽木誠一郎 写真=小田駿一 ヘアメイク=小森真樹(337inc.)

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