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Homedoor理事長 川口加奈

8月25日発売号「30 UNDER 30 JAPAN」にて、「ソーシャルアントレプレナー」部門で受賞した川口加奈。

14歳でホームレス問題に出合い、19歳で「ホームレス状態を生み出さない日本に」をテーマに、支援団体Homedoorを大阪で立ち上げた川口加奈。ホームレスの人たちがもつ自転車修理のスキルを生かしたシェアサイクルサービス「HUBchari」などの事業を通じて、のべ1500名以上のホームレスや生活困窮者に接してきた。

設立8周年を迎えた今年4月には、念願の施設をスタート。13年にわたって活動を続けてきた彼女の行動力の源泉はどこにあるのか? その想いを訊いた。

──このほど、ホームレスの人々を支援するための新しい拠点「アンドセンター」をオープンされました。まずは、その背景から教えてください。

これまで、ホームレスのおっちゃんたちが得意な自転車修理の技術を生かして雇用を生み出すシェアサイクル事業「HUBchari」をはじめ、就労支援や生活支援の多種多様なメニューを開発し、2017年には、新規で289名の方が相談に来られました。

そうした支援を通じて痛感してきたのは、彼らが貧困状態から抜け出そうとする際に直面する「負のトライアングル」の存在でした。自力でホームレス状態を抜け出すには、仕事をして住まいを得るためのお金を貯めなければなりません。

しかし、仕事をしたいと思っても、そもそも住所がなければ仕事が見つかりません。運よく仕事が見つかったとしても、日本の企業の多くは給料をもらえるのは翌月です。つまり、貯金がなければ最初の給料日までの生活ができません。

ドヤ(簡易宿泊所)やインターネットカフェに寝泊まりして仕事に行く方法もありますが、宿泊代や食費、ランドリー代に荷物を預けるロッカー代などがかかり、かえって生活費がかさみます。路上生活をしながら働いてお金を貯めるのは非常に難しいのです。



「自力で抜け出すのが難しいのなら、行政の制度を使えばいいじゃないか」と思われるかもしれません。生活保護を申請して、まず住まいを確保してから仕事を見つけて抜け出す方法もたしかにあります。しかし、路上で生活をしている人が行政の窓口に行くと、まず施設への入所を勧められることがあります。

野宿をしているというだけで、「本人に何か問題があるのではないか」「アパートで生活しても、保護費を使い切って家賃を払えなくなるのではないか」と思われてしまうからです。

また、行政の用意している施設は相部屋のものがほとんどで、プライバシーの希薄な集団生活を強いられることになります。障害をもっていたり、コミュニケーションが苦手だったりして、そうした施設で生活することに耐えられない人もいます。結局、やむを得ず施設を出て、野宿を続けざるをえない場合も少なくありません。

そこで、すぐに入居できてプライバシーの保てる個室で生活しながら「仕事」と「貯金」を確保し、新たな「住まい」を得て自立した生活が定着するまで見守ることのできる施設が必要だと考えました。それを実現するのが「アンドセンター」です。

全室バストイレ付きの個室20室、ランドリーやキッチン、パソコンや図書も利用できる団らんスペース、そしていつでも仕事や生活の相談ができる相談室が揃っており、包括的な支援拠点になることを目指しています。もちろんHUBchariステーションもあり、おっちゃんたちが自転車の貸出やメンテナンスの仕事に取り組むこともできます。


6月にオープンした「アンドセンター」。1階は団らんスペースになっており、ホームレスの人々が食事や調べものをするために使うことができる。(写真:Homedoor)

文=松本優真 写真=衣笠名津美

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