今年7月にも停滞した梅雨前線の影響で九州豪雨が発生。全国各地で豪雨災害のリスクにさらされ、「明日は我が身」として私たちができることは何か。
「平成最悪の水害」の面接調査
全国に先駆け、西日本豪雨で甚大な被害を受けた広島県が、早期の避難行動を呼び掛けるために意識調査をした上で、メッセージを発信している。
広島県では、西日本豪雨の被害者の半数以上を占める138人(災害関連死は29人。7月3日現在)が亡くなった。広島市や呉市、坂町などで土砂災害が多発し、巻き込まれるケースが多かった。実際に避難行動を実践した県民が少なかったことから、広島県は昨年10〜12月、特に被害の大きかった9市町の約500人を対象に専門家とともに面接調査を実施した。
面接調査では、実際に避難した人によると、「周りの人が避難しているなど他者からの呼びかけに影響された」や「他者から逃げるように心配されて呼びかけられた」「他者から呼びかけられたことをきっかけに、車など避難の手段を話し合い、避難への活路を見出した」などの回答が多かったという。
面接調査の結果を分析する中で、「メッセージを工夫することで避難行動を促進できるのではないか?」という一つの仮説が導き出された。
そこで、他者からどのような呼びかけがあれば、避難を促されるのかを分析するため、毎年行っている防災・減災に関する県民意識調査(18歳以上の10000人を対象)で、6パターンのメッセージを用意し、対象者にそのうち1つを送付して避難の是非を聞いた。このうち、2つのメッセージが、従来に比べて避難行動を促す可能性が高いことがわかった。
研究チームの一員、広島大学大学院の坂田桐子教授(行動心理学)は「避難を促進するためには、他者の要因が重要で、他者に対する責任が、避難への意識を高める」と解説する。避難勧告などの情報を入手したり、河川の水位や土砂崩れなど周りの状況を見たりしただけでは、避難を判断するケースは少ないという。