「異質なふたつの要素を統合させる」
これがヘーゲルの弁証法の根幹だとまず覚えておいてください。では、どのように道具として使えるのでしょうか。
ホットドッグで弁証法を理解しよう
弁証法を道具として使う際に、わかりやすい例をひとつご紹介しましょう。
ここに、ホットドッグがあるとします。ホットドッグは大まかに言うとソーセージとパンでできています。ソーセージだけ食べてもおいしいですね。パンだけ食べてもおいしい。でも、ソーセージとパンは、お互いに異質で相入れないものです。
では、ソーセージから見ると、パンはどのように映るでしょうか?
ヘーゲルの弁証法では、ソーセージを中心に考えたとき、ソーセージを「正」と呼びます。そして、ソーセージから見たパンのことを「反」と呼びます。「正」は英語ではThesis(命題)、「反」はAntithesis(対立した)という意味です。
・ソーセージ→「正」
・パン→「反」
ここで、バラバラにそれぞれ一口ずつ食べることもできるのですが、パンに切れ目を入れてソーセージを挟んで食べてみると、「一緒に食べるからこその食感、味わい」というものが生まれます。ホットドッグという新しい食べ物の誕生です。
このホットドッグのことを「合」、英語ではSynthesis(統合、合成の意味)と言います。Synthesisとは、楽器のシンセサイザーの語源といえばわかりやすいかもしれません。
・ホットドッグ→「合」
ソーセージ(正)とパン(反)を別々に食べるのではなく、組み合わせることでホットドッグ(合)という、えも言われぬより高次元の食べ物が生まれたのです。この次元が上がるプロセスを日本語では「止揚」、ドイツ語や英語ではAufheben(アウフヘーベン)と言います。
ほかにも、ソーセージを(正)に、野菜という(反)を組み合わせ、味付けして煮ればポトフという「合」になります。また、ソーセージ(正)とパン(反)を止揚して生まれたホットドッグ(合)を「正」として、今度は異質なコカコーラ(反)を用意してみましょう。すると、今度は「ホットドッグセット」という新しい「合」が生まれます。
このようにヘーゲルの弁証法は、さまざまな角度から答えを導き出すことも、または発展させることもでき、続いていくというのが大切なポイントです。