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2019.07.20 18:05

「スターウォーズ」のストーリーは、才能ではなく「方法」で書かれた

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私は今、初監督作品を作っている新米の映画監督です。新米と言ったのは、それまではまったく違うことをしていたからです。

私は4年間浪人をして大学に入学し、卒業後は広告代理店でマーケティングの仕事に携わりましたが、1995年、地下鉄サリン事件の被害者となります。退職後にはアメリカの経営学大学院に留学し、その後シリコンバレーで友人のベンチャーを手伝い、帰国してからは学校の講師やコンサルタントとして活動しています。

私は非常に勉強の苦手な子供でした。しかし、なんとかここまでやってこられたのは、人がつまずく問題には大体つまずき、そのたびに何かの「方法」を開発することで対処してきたからではないかと思います。

そんな私が普段から使っている非常に有用な手段が、「ヘーゲルの弁証法」という哲学です。ではヘーゲルの弁証法とは何か? どのように有用なのか? この連載では、哲学を専門としない私だからこそ語れる、「生きた哲学の活用法」を紹介していけたらと思います。

映画の脚本に革命をもたらした「道具」

私はこれまでマーケティング、学校講師、コンサルタントとさまざまなことをしてきましたが、実は子供のころからずっと映画を作るのが夢でした。地下鉄サリン事件に遭ってからは、後遺症があるので現場のアシスタントをする体力もありませんでした。

そんな私が何をしたのかというと、映画の撮り方を学んだのではなく、映画についての研究です。映画の学校に行ったわけでもなく、誰かに師事したわけでもありませんから、まったくの独学です。

映画では「スジ(ストーリー)」「ヌケ(美しい背景)」「ドウサ(俳優の演技)」の順に大切だと言われます。「日本映画の父」と言われる牧野省三氏、その息子マキノ雅弘氏が守っていたこの原則に従い、私は、まず「スジ」の研究、つまり「ストーリーの研究」から始めました。

かつて、ストーリーの創作は個人の才能重視で書かれていました。

おもしろいストーリーが時代の淘汰を生き残っていくのが世の常ですが、20世紀に入り、昔話を機能分解、構造分解してみたら何かわかるかもしれないと考えた学者が現れました。ロシアの民俗学者ウラジミール・プロップです。彼は1928年に出版した『昔話の形態学』という本の中で、昔話をよく観察し整理してみると、31の機能とステップで成り立っていると書いています。

時期をほぼ同じくして活動していたのが、アメリカの神話学者ジョセフ・キャンベルです。キャンベルは代表作『千の顔を持つ英雄』で、「ヒーローズ・ジャーニー」と言われる神話の構造を明らかにしました。大まかに言うと、神話のストーリーは8つのステップで構成されるとしたのです。

1. 天命を知る
2. 旅の始まり
3. 境界線を越える
4. メンターとの出会い
5. 悪魔との戦い
6. 自己の変容
7. 課題完了
8. 故郷へ帰る
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文=さかはらあつし 編集=石井節子

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