これとは全く異なる見解を示すのが、モービルアイのCEOのアムノン・シャシュアだ。シャシュアは可能な限り安全性を重視した姿勢で、自動運転技術の向上を目指している。2017年に彼は自動運転車の安全基準モデル「Responsibility Sensitive Safety(RSS)」を提案した。
RSSの目的は、人間のドライバーが運転中に負う、責任や注意事項を自動運転車にも適用するための、詳細かつ測定可能なパラメーターを提示することだ。シャシュアはこのモデルで、自動運転車が事故の要因になりえない「安全な状態」を定義した。
RSSはその後、中国のバイドゥを含む複数の企業に採用され、エヌビディアもこれに類似した基準を策定した。
シャシュアは6月9日、完全な自動運転の実用化に向けての考えをまとめた論考「Navigating the Winding Road Toward Driverless Mobility」を、インテルの公式サイトで公開した。
モービルアイは先進的なマシンビジョンシステムを用いた、車線変更支援や衝突防止システムで、初期のビジネスモデルを築いた。テスラが2015年に発表したオートパイロットの初期版は、モービルアイの技術をベースとしたものだった。
そのシステムは前方方向の1つのカメラと、レーダー、さらに超音波センサーを組み合わせたものだった。しかし、2016年にテスラのモデル3がオートパイロット走行中に死亡事故を起こして以来、テスラとモービルアイの関係は途絶えた。テスラはその後、独自にオートパイロットのバージョン2を開発した。
テスラもモービルアイも、カメラを中心としたアプローチをとる点では共通している。しかし、モービルアイのシャシュアは、安全性を高めるためには、さらなる装備が必要だと考えている。
「モービルアイはカメラのみで完結する自動運転システムを目指している。さらに、RSSで定めた安全基準に適合させるため、LiDARやレーダーを装備する」とシャシュアは述べている。