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杉原行洋(左から2人目)率いる、異能の専門家集団「セブン・シグマ・プロジェクト」の面々。

最新のテクノロジーで金融業界を再編するフィンテック企業。だが、その多くはIT業界発だ。 このまま呑まれるわけにはいかない──。金融の枠を飛び出そうとする投資会社に迫った。


2018年11月末、陽が落ち始めた兜町。東京証券取引所に隣接するビル内の会議室で待っていると、Tシャツにデニム姿の男が人好きのする笑顔で現れた。日本株投資を専門とする会社社長のプレゼンを聞きに来たはずだった。それが実績や戦略に関する話もそこそこに、こう切り出したのだ。

「ヒトの『意思決定システム』をアルゴリズム化し、その意思決定を支援するプロダクトを開発したいのです。最終的には私がいなくても、社員たちが私の代わりに投資判断を下せるようにできれば、と」

ハヤテインベストメント創業者、杉原行洋(41)。2005年に同社を立ち上げて以来、CEO(最高経営責任者)兼CIO(最高投資責任者)を務め、有数の資産運用会社へ育ててきた。過去13年間にわたる累積リターンが約+370%、年率複利が約+13%と、驚異的な運用実績を叩き出している。

デジタル化の波で既存産業が“ディスラプト(破壊)”されて久しい。ITスタートアップの台頭でメディアや小売りが変革を迫られるなか、規制産業にもその足音が迫っている。医療や農業、そして資産運用業、保険業や銀行業を扱う金融業界である。

こうした状況にあって、ハヤテのような資産運用会社はどのような対策を講じているのか。好奇心に駆られての面会だったが、彼の「ヒトの意思決定システムをアルゴリズム化したい」という答えは想像を超えるものだった。

日本が大好きな“ベンチャー野郎”

じつは杉原が起業したのは、ハヤテが初めてではない。東京大学に在学中、仲間と共に広告の配信エンジンを提供するベンチャーを立ち上げた経験をもつ。経歴から金融一筋に見られがちだが、自分のことを根っからの“ベンチャー野郎”だと分析する。男8人、リポビタンDの空き瓶が100本散らばって足の踏み場もない六畳一間の一室で開発に没頭する日々。楽しい毎日だったが、大手企業のサービスとかぶり、事業は頓挫する。

「ヒト・モノ・カネが潰えて夢が消えました。でももう一度トライしたい、と。それで最短最速で多くの人に会え、自分のスキルが上がり、願わくばビジネスモデルもたくさん見られる—。企業投資に携わる仕事を選んだのは、逆算した結果でした」

01年、杉原は米投資会社ゴールドマン・サックスに新卒で入社した。配属先は、株式部門デリバティブズのトレーディングデスク。ところが花形のポジションにもかかわらず、1年半である国内の資産運用会社に引き抜かれて移籍することに。周囲の猛反対を受けた。しかし、“外資系”という看板と、その実態に「違和感を感じていた」と振り返る。

「私は元来、日本が大好きなんです。それが、“舶来モノ”に弱いから外資系を選んでしまった(笑)。しかし、ふたを開けてみると外資系企業も現場は日本人ばかり。やはり日本の資本市場は日本人が支えているのだと、誇らしく思いました」

加えて投資を通じて日本の会社の魅力を知り、製品やサービスの独創性や革新性が過小評価されていることにジレンマを覚えていた。いかに日本の良いものをパッケージして世界に伝えるか─。外資系企業での違和感や、日本の企業とりわけ中小企業への強い想いもあって再度の起業を決意した。

文=井関庸介 写真=Shoko Takayasu

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