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2019.06.14

本当に広告は「終焉」したのか? 電通クリエイティブディレクターに聞いた広告のあり方

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──「広告の終焉」という言葉を、広告関係の人が近年よく口にしているように思います。

これも広告の視点を変えた結果生まれた言葉ではないでしょうか。様々なデジタルデバイス、さらに広くとらえればスポーツやエンタテインメントなど、これまでの広告の枠に収まらないコミュニケーションツールが増えた現代では、ただ声高に叫んで一方的に物を売りつけるような狭い「広告」手法は通用しません。

カンヌライオンズも2011年に正式名称を「カンヌ国際広告祭」から「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に変更したように、広告業界の人たちが内輪で褒めあうようなフェスティバルではなくなりました。

こうした変化からわかる企業に求められていることは、消費者が漠然と感じている課題や願望などをブランドと関連付けながら可視化して、一緒に解決できる場を用意することです。

「ソーシャルグッド」も近年のカンヌライオンズ を語る上でよく用いられるキーワードですが、ただ社会にとっていい行いをすればいいというわけではありません。例えばある企業が、自分とは全く接点のない遠い国の食料危機を解決しようという取り組みをしていても「いいことしてるんだね」としか思いませんよね。

消費者が普段からうすうす感じていた、例えば「どうして新卒の優秀な人には女性が多いのに、役職に就いて活躍している女性は少ないんだろう」という疑問や、「自分がその状況を変えることに何か貢献できないか」という願望に、引っかかりを残すことができるか。2017年の「Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)」は、まさにその好例です。

企業が社会とどうコミュニケーションをとっているか、そして自分にどんな「機会」を用意してくれるのかを、消費者は見ています。選択肢が溢れかえっている現代では、長い間付き合っていくことができて、その考えを支持することで自分の考えも明確にしてくれるような企業が求められているのでしょう。

「いいことをしたい」という思いは人間の根本にあるもの。それを踏まえると、今年もソーシャルグッドが支持される傾向に大きな変化は生じないはずです。

時合を読み、アイデアの力でサービスやビジネスのレベルを一つ押し上げるのが、現代のクリエイターに求められる力。その「クリエイター」は、広告業界の人に限りません。アイデアの力で新しい価値を生み出したい、全ビジネスパーソンが該当します。
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構成=守屋美佳

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