共通点もコントラストもある
新国立劇場の芸術監督は、世界的に活躍する指揮者・大野和士さん。レパートリーを広げるため、2019年から「ダブルビル」を1年おきに上演することになりました。今回は、ツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」と、プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」です。ただ並べて上演するだけでなく、意味付けがあるそうで、共通点は、
1. それぞれ上演時間が1時間ぐらい
2. 初演が1917年1918年と時期が近い
3. どちらも舞台がイタリア・フィレンツェ
ということです。
一方がドイツ語の悲劇で、一方はイタリア語の喜劇というコントラストもあります。作品が作られたころは、映画やミュージカルが出てきて、オペラも成熟した内容となっているそうです。指揮は、びわ湖ホール芸術監督・沼尻竜典さん、演出はイタリア育ちの粟国淳さんでした。
「ゆとり」が必要なオペラ鑑賞
筆者は以前、オペラやバレエの取材をしていたこともあり、劇場に足を運んでいました。そうした舞台の上演時間は、長いものが多く、特にワーグナーの4部作オペラ「ニーベルングの指輪」は、全て上演すると15時間かかる大作。1日に1部の上演を、何年かかけて見ました。
オペラは休憩を数回はさみ、ゆったり見るもので、時間的にも、集中力の面でも、ゆとりがないと楽しめません。
このダブルビルの公開舞台稽古は、本番の昼の部と同じ午後2時からのスタートで、休憩1回を含めて2時間半ぐらい。久しぶりにオペラを見に行きました。
ドイツ語の悲劇は、男女3人の愛憎物語で、重苦しい展開でした。日本語の字幕を見ながら、物語についていくのもエネルギーがいります。1時間ほどで完結なので、集中できました。
2本目のジャンニは、机の上を舞台にして、登場人物が小さくなり、引き出しに入ったり、ペンを担いだりと大騒ぎ。衣装もカラフルで、楽しい演出でした。ソプラノの名曲「私のお父さん」は、オペラが詳しくない人でも知っている旋律です。
重苦しい空気に浸った悲劇の次に見ると、喜劇の軽やかさが際立ち、すっとしました。
休憩は1回で、待ち疲れません。共通点も個性もある2演目に触れ、充実感を感じながら、ゆとりを持って帰れました。夜の部は7時からで、これぐらいの時間なら終演が遅くなりすぎないでしょう。