現在、グラブは、個人間のライドシェアおよびタクシー配車サービス、オンデマンド輸送サービスに加え、ドライバー向けレンタカーサービスなどを展開している。現在のピッチブック(投資銀行がクライアント企業にM&Aや資金調達の提案を行う際に用いる提案資料)から見積もった企業価値は、1400億ドル(15.5兆円)だ。
クアラルンプールの中心地に立ち並ぶ豪華なショッピングセンターの周りを歩いていても、グラブの広告や、道路を走るグラブ・フードをよく目にした。これは、最近、東京でもよく目にするウーバーイーツのようなものだ。
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その他にも、グラブは多くのサービス展開(GrabTaxi、GrabCar、GrabRemorque、GrabBike、GrabHitch、GrabExpress、GrabFresh、GrabPay、GrabFood)をしている。各地域の特徴に合わせたサービスを行えることが、アジアに強い理由の1つであるだろう。なお、対するウーバーは、173カ国785の都市でサービス展開しており、世界最大規模を誇っている。
LAに行くよりKLに行こう
1週間の滞在だったが、マレーシアのホテルは快適だし、レストランやカフェ、ビルの最上階にあるどこのバーに行っても、ハイクオリティーで美味しいカクテルを楽しむことができた。英語での笑顔の接客も、国際的かつ好印象だった。とはいえ、例えばカクテルが1杯2000円ほどするなど、その値段は東京の銀座とあまり変わらない印象を受けた。
滞在中には、私のメンターである実業家の方に、最近購入されたマンションにお連れいただいた。IoT化の進んだ部屋では、シャンデリアも空調も全てスマホのアプリで操作。インターネットのスピードも1GBPSと、日本の大半のマンションの10倍の速度で快適だった(日本は一部の最新のマンションを除き、100MBPSが標準)。
テクノロジー面で日本も早く導入すべきだと思ったのが、高速道路のTouch And Goカード。そのままマンションやショッピングセンターの駐車場の支払いに使えてとても便利だった。
ドローンファンドを運営するエンジェル投資家の千葉功太郎氏に会うと、「グローバルで活躍するドローンスタートアップを探している中で、マレーシアに本社をもつ会社に出会い、現地で事業提携した」と話していた。マレーシアは昔から日本の友好国であり、かつ、ドローンも国としての後押しもあるようで、期待も大きいそうだ。
現地で大成功している実業家や海外経験のある医師たちとも会うことができた。彼らは、マレーシアのスタートアップエコシステムは年々拡大しており、政府のサポートもあり、資金調達もしやすくなっていると口を揃えていた。
クアラルンプールのことは、略称で「KL」と呼ぶが、もう数年もしたら、「LAに行くよりKLに行こう」というように使われるような気もした。KLはそれほど、街も人も魅力的で、マルチカルチャーな街だった。
連載:イノベーション・エコシステムの内側
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