「Look at this.」ツイッターの大きな特徴
ツイッタージャパンのブランドストラテジーチームは10人弱。広告会社出身のメンバーが多い。ツイッター上で繰り広げられている会話を常に傾聴し、ユーザーやトレンドの理解に努めている。「『ツイ廃集団』なんです。一日中、ずっとツイッターを見ています(橋本氏)」
それではツイッターユーザーの特徴は何なのか。 メンバーによると、一般的なSNSの投稿の多くは「私を見て」(Look at me.)だが、ツイッター上のツイートの多くは「これを見て」(Look at this.)なのだそうだ。
確かに他のSNSは、自身の近況報告を投稿するのが主な使われ方である。一方ツイッターは、時事ネタを生かした大喜利的な投稿や、お茶目な動物の写真、思わず頷いてしまうような金言、現場の臨場感が伝わる動画投稿……。中には「私を見て」という内容のツイートもあるが、ツイッターで爆発的に拡散されるツイートは確かに「これを見て」という性質のものが多い。
こういった特徴があるツイッターだからこそ、マーケティングに活用する際、うまくハマれば大きな効果を生むのだ。「ヒューマンセントリック(人間主体の)アイデア」がヒットの鍵だという。
「企業の課題に対し、利用者のインサイト(隠れた心理)やトレンドを提案します。企業のメッセージをいかに届けるか、ではなく、どうしたらユーザーさんが会話をしたくなるような仕掛けができるのかを考え、提案します(湊川氏)」
マヨネーズの訴求にアンケートツイート 93万票集める
ツイッターを活用した具体的な成功事例を求めると、こんな海外事例を紹介してくれた。
トマトケチャップで有名なハインツ(HEINZ)が、マヨネーズも販売していることを訴求するために、こんなツイートをした。
Want #mayochup in stores? 500,000 votes for “yes” and we’ll release it to you saucy Americans.
— Heinz Ketchup (@HeinzKetchup_US) 2018年4月11日
「マヨネーズとケチャップを合わせた、『マヨチャップ』という商品が出たら欲しいですか? 50万人が投票してくれたら販売します」というアンケートツイートをしたのだ。
最終結果は93万票、うち55%の51万人超が「欲しい」に投票し、実際に商品化された。「マヨチャップ」というキャッチーな新商品の話題を生み出す中で、ハインツがマヨネーズも作っていることを自然に認知させることに成功したのだ。
こういったアンケート投稿は時に大きな盛り上がりを生む。国内でも、明治のスナック菓子「きのこの山」「たけのこの里」の人気を競う「#きのこたけのこ国民総選挙」は記憶に新しい。
さらにツイッターらしいのは、「『ケチョネーズ』がいいな」という個人のツイートに対して、ハインツが「じゃあ、これはあなたのために」と、「ケチョネーズ」バージョンのパッケージの画像をリプライ(返信)したことだ。このようなウイットに富んだ投稿が拡散され、ブランドへの好感が高まる。
This one’s just for you, Andy. pic.twitter.com/r3N2kmAkG2
— Heinz Ketchup (@HeinzKetchup_US) 2018年4月11日
「マヨネーズもケチャップもずっと昔からある商品だからこそ、『マヨネーズを発売します。買ってください』というメッセージだけではなかなか反応してもらえるものではありません。今回はツイッターユーザーのインサイトを突いた投稿で、コミュニケーションが生まれたのが良かった(江上氏)」
ブランドストラテジーチームはこうした具体的な事象を抽象化しナレッジにできるよう、努めている。企業の様々な相談に対し、よりツイッター上で盛り上がる「文脈づくり」を支援するためだ。