イーグルブルックでは、小6から中3まで、それぞれの成長過程にあわせた教育テーマを掲げている。小6から順に、「Exploring(幅広い分野の探求)」「Understanding(自らを知り他者を知る)」「Growing(能動的な自己能力開発)」「Leading(リーダーシップ)」の4つだ。
話を聞く中で慶さんは、「日本だと部活は1つ選んで3年間ずっと一緒。もっと色々なことに挑戦したかった」と語っていた。
無論3年間一つの競技に打ち込むことで培われる力もあると思うが、様々な興味対象を「Explore」できるのは、イーグルブルックに限らず海外の学校の多くに共通した特長だ。学期ごとにスポーツを選び、それぞれ本格的に取り組み、他校との試合などもシーズンごとに行われる。
ここではさらに、ロボティクス、木工、陶芸、絵画、オーケストラなど文化系のアクティビティも多数あり、それぞれにプロの専門家や芸術家が指導にあたる充実ぶりである。この全てを「習い事」として東京でプロに師事したら、いったいいくらかかるのだろう……などと考えてしまうのは、庶民的な私の悪いクセだろうか(笑)。
オーナーシップもリーダーシップも
理科の各実験室の充実ぶりも凄まじかった。生物の部屋では、なんと生徒がサラマンダー(サンショウウオ)を飼育している。UnderstandingとGrowing(中1、中2)のステージで、生徒たちが次第に自らの興味分野で学びのオーナーシップをとって行く様子を、垣間見た気がした。
また、全校集会をするオーディトリアムでは、最高学年であるLeadership(中3)のステージに在籍する生徒は全員、必ず毎朝順番でスピーチをしなくてはならないという。寮で下級生の面倒をみるのも最高学年の責任だ。日本ではとかく部活や生徒会、運動会などで自然発生的に起こっているリーダーシップをとる機会が、ここではかなり意図的にちりばめられていることに、教育の現場にいる者として深く感銘を受けた。
編入から半年を経た慶さんに学校の魅力を聞くと、次のように語ってくれた。
「毎日学ぶことがあります。寮生活での友達や先生との付き合い、陶芸やウェブサイトデザイン。特に学びが多いのは1カ月に1〜2回あるHilly Chase。毎回なんらかのプロフェッショナルをお呼びして、体験談や技を披露いただくというものです。過去にはヨーヨーのプロから語り部まで幅広い方が来ています。見ていて楽しいものから、聞いていて考えさせられるものまで沢山ありました」
イーグルブルックの卒業生たちは、近隣にあるディアフィールドに限らず、アメリカの東海岸や西海岸のトップボーディングハイスクールへと進学している。
こうした経験を積んだ中学生たちが、ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)が提供する「国籍だけでない真の多様性」や、我々ISAKのキャンパスで提供する「自らイニシアチブをとる可能性」に触れたときに、どんな化学反応を起こすのだろう……。そう思いを馳せながら帰国の途についた。
連載:日本と世界の「教育のこれから」
過去記事はこちら>>