越境イノベーターたちと考えた「本気が生まれる組織の育て方」

Jリーグ理事 米田惠美さん


メンバーの熱量を維持する秘訣とは?

では、メンバーの「やりたい」「実現したい」「チャレンジしたい」という熱量を維持するためにはどうすればいいのか。


会場の反応をみながら、わかりやすい言葉で語ってくれた

「メンバーの熱量はすごく大事にしています。まずは、熱量の高い人間をつぶしにかかる勢力から守れる場所をつくる。そして、生まれた変化をきちんと抽出してあげることが重要です。それでも心細くなるものなので、熱量の高い人たちを集めること。とにかく孤独を生まない!」(米田)

熱量高く走り出した人間は、ともすると周りに理解されずに孤独を感じたり、「これでいいのか」「間違っているのではないか」と迷ったりすることがある。すると、せっかくの熱量が冷めて、行動にブレーキがかかってしまう。それを避けるためには、まずつぶされない場所をつくってあげること。また、「こんな変化が生まれたよ、と結果を可視化して提示するコーディネート力がリーダーには必要」だと米田さんは言う。

また、役割そのものに関しても、「上から無理にチーム分けせずに、その人それぞれがやりたいことに夢中になってもらうように采配することも重要」とのこと。

チーム間で縄張り争いのような問題や衝突が起きそうになったら、「役割自体の定義を拡張する」ことで解決する。例えば、ボランティアの清掃の持ち場争いのようなことが起きたら、まずボランティアの定義や役割をどんどん拡張すればいい。できることが広がるし、関わってくれる人の数も増え、「役割の拡張が、関わりの拡張になる」(米田)。


「観光」や「働く」の概念を変えたいと話すパソナの加藤さん

また、熱量の高い人たち同士をまとめて、孤独を生まないような組織デザインも、リーダーにとって重要な役目となる。

「おそらく米田さんは、みんなの話を『聴く』なかで、メンバーの行動から組織の理念に沿った部分を抽出してフィードバックしているのではないか。職員にとっては、自分の仕事の意義を再定義するきっかけになっているはず。役割のデザインが天才的」(加藤)

このイベントのもとになった5月号の特集タイトルは「CRAZY FOR GOOD」。誰もが熱量を持って何かにクレイジー(夢中)になれる環境をどう作れるかが、これからの時代のリーダーに求められる力なのかもしれない。

一度は直面したことのある「チームあるあるの壁」を解決するには?


肩を寄せて話しあう参加者のみなさん。あちこちで笑い声も上がる

続く第2部のワークショップでは、地方創生の文脈には欠かせないメンターたち、齋藤潤一さん(こゆ地域づくり推進機構代表理事)、佐別当隆志さん(ADDress代表取締役社長)、柴田義帆さん(ウダツアップ代表取締役社長)、菱木豊さん(inaho共同創業者兼CEO)、そして加藤遼さん(パソナ ソーシャルイノベーション部長)が登場。各グループのリーダーとして議論を盛り上げた。

アイスブレーキングの自己紹介の後、各チームには具体的なケーススタディが配られ、10分のグループトークの後、それぞれのベストアンサーをリーダーが発表した。

▼ケーススタディ1

50人規模の会社に転職して自分が得意としてきた営業のトップをつとめることになりました。小さい会社でありながら、前のカリスマ的リーダーに依存体質で自分の頭で考えようとする人が少ないようです。彼らにより自発的に動いてもらうにはどうしたらいいでしょうか。

解決法を答えてくれたのは、齋藤さんと佐別当さんのチームだ。

「メンバーそれぞれが違うモチベーションや背景を持っている多様な社会だからこそ、まずやるべきことは〝対話〟ではないか。目指すべきビジョンやミッションを共有することで、自発的に動ける組織が作れるはず」(齋藤)

「みんなで1000円分の好きなものを持ち寄って無人島に2泊3日する!お互いの人間性を共有し、自分らしさを発揮できるようになれば、メンバー同士が自分の思ったことを話せる関係になれるのでは?」(佐別当)

齋藤さんが拠点を置く宮崎県新富町は「世界一チャレンジしやすいまち」をビジョンに掲げている、という話から、「チームのビジョンミッションバリューをうまく押し出せれば、仲間づくりにはとても有効」と米田さん。


課題解決案が次々とメモされていく
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文=松崎美和子 写真=林亜季、久世和彦

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