越境イノベーターたちと考えた「本気が生まれる組織の育て方」

Jリーグ理事 米田惠美さん

新年度になって、組織づくりの壁に直面したリーダーも多いのではないだろうか。チームに当事者意識を持ってもらうにはどうすればいいのか。チームの熱量を維持していくためには、どんな仕組みづくりが有効か──。

4月8日、Forbes JAPANでは「本気が生まれる組織の育て方」をテーマに、5月号(3月25日発売)の特集で取り上げた方たちをゲストに迎え、トークセッションとワークショップを行った。

トークセッションには、表紙を飾ってくれたJリーグ理事の米田惠美さんと、“旅しながら働く部長”の肩書きを持つパソナの加藤遼さんが登壇。続くワークショップには、齋藤潤一さん(こゆ財団)、佐別当隆志さん(ADDress)、柴田義帆さん(ウダツアップ)、菱木豊さん(inaho)、そして加藤さんがチームリーダーとして参加してくれた。

チケットは完売。限定30名の参加者のほとんどが、部長や課長、室長などのリーダー層で、イベントが始まると、熱心にメモを取ったり、積極的に議論の輪で発言したり、会場はリラックスした雰囲気ながら前向きな熱気に満ちていた。

まずは、第1部のトークセッションの様子からレポートしよう。

メンバーに「当事者意識」を持たせるには?


熱心にメモをしたり、話に聞き入る参加者のみなさん

公認会計士という畑違いの分野からJリーグ理事となった米田さんは、組織にとって「異分子」=アウトサイダーだった。そんな彼女がジョインした当初、組織には大きな波風が立ったという。そんな状態でどうやって組織をまとめることができたのか。

「それぞれの役割・持ち場をつくり尊重すること。上下関係ではなく、同じ方向を目指している仲間であるというマネジメントをすることが重要です」(米田)

彼女がまず実行したのは、職員やクラブのスタッフ、サポーターなど会う人会う人に「サッカーが好き」のルーツを「真相」に突き当たるまで聴いていくことだった。ファンが何に熱狂しているのか、職員がどんなモチベーションで働いているのか──。同じ「サッカーが好き」でも、「なぜ?どうして?」と深掘りしていくと、それぞれ違う理由や動機を持ってサッカーと関わっていることがわかったという。

「サッカーはエンターテインメントです。どんなところに人が感動するのか、何が『好き』や『熱狂』を生んでいるのかを知るために、このヒヤリングからたくさんのヒントがもらえました」(米田)

いまでも色々な人に聴いているそうで、「もうほとんど趣味」と米田さんは笑うが、こうした徹底した「聴く」姿勢は、チーム内の適切な役割を見極めるためにも有効だ。

さらに米田さんは、チームメンバーに当事者意識をもたせるための具体的なステップとして、次の3つを挙げた。

1. 見えている視界(ビジョン)を共有する【知る】
2. 共感してもらえる伝え方をする【共感する】
3. メンバーそれぞれができる、動ける、貢献できるという感覚を持てるようにする(学ぶ・仲間をつくる・実践の場の提供)【“できる”をつくる】

「この『知る→共感する→“できる”をつくる』をセットにして仕組み化すれば、自分ゴトとして動けるメンバーが増えていくはずです」(米田)

1は、「誰が正しい、間違っている」という議論は避けて、「やり方は違うかもしれないけど、見ている方向は一緒だよね」と目的への認識を合わせる作業。2は、「課題」ではなく「のびしろ」など、ポジティブな表現を使う。相手が「批判された」と感じる表現をしないこと。3は「動けない」から「できる」という感覚をひとつでも持ってもらうために、学びや実践の場というアウトプットやチャレンジができる環境を整えること。米田さんが具体的な例を展開すると、会場からは大きなうなずきが起きた。
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文=松崎美和子 写真=林亜季、久世和彦

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