ベルギーで増える「安楽死ツーリズム」 EUに批判の声

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安楽死についてのニュースは、その合法性を巡る法的・倫理的な論争に関するものであることが多い。しかし最近、新たに議論を巻き起こしているトピックがある。それは「安楽死ツーリズム」だ。ツーリズムは通常、楽しい経験と結びついたものであり、自ら命を絶ちたいという願望とはかけはなれているため、この言葉は奇妙な組み合わせだ。

安楽死ツーリズムとは一般的に、自国では安楽死が禁止されていたり、厳しく規制されていたりする人が、安楽死や自殺ほう助が合法な国に旅することを指す。

安楽死ツーリズムは、もう一つのトレンド「メディカルツーリズム」と関連したものと考えることができる。医療技術の進化と旅行の機会の増加、医療のグローバル化により、消費者は海外へ渡航して医療処置を受けることが可能となった。海外での医療で特に人気なのは、美容整形手術や歯科手術、心臓・整形外科手術、臓器移植や組織移植だ。

安楽死ツーリズムが世界のメディアで改めて注目されたきっかけとして、最近起きた2つの出来事がある。

1つ目は、米国のニューメキシコ州とアーカンソー州の議会で、自殺ほう助合法化法案が否決されたことだ。法案は、自分の苦しみを終わらせるため命を絶つことを希望する患者に対し、医師が絶命用の薬を処方することを可能にする内容だった。キリスト教系新聞のクリスチャン・ポストは、この法律が成立すれば他の州の人々が安楽死を目的にニューメキシコを訪れる「自殺ツーリズム」が生まれると報じた。

2つ目は、「欧州連合(EU)によって安楽死ツーリズムが助長されている」との批判だ。これにより、安楽死を求める患者にとってベルギーが人気の旅先になっているという懸念が高まっている。

安楽死が2002年から合法とされているベルギーを訪れる患者数は顕著に増えている。そのほとんどはEUに加盟する27カ国からの渡航者だが、安楽死が禁止されている世界の他地域から訪れる人もいる。最も多いのはフランスからの安楽死希望者だ。

この問題をめぐる議論は、新たな要素により再び火が付いた。それは、外国の医師がベルギーを訪れ、末期患者に安楽死を提供することをめぐる法的問題だ。
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編集=遠藤宗生

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